イエツム

相続のこと、もっとわかりやすく。
もっとスムーズに。

知っていたから利用できた空き家の「税制優遇制度」

2022/10/11

シェアする
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

このページでは、潮田さんの相続手続きを担当した税理士が、今回の相続を振り返って解説します。

<この事例の概要>
潮田真理子さん(仮名)は、母親が亡くなって相続を経験しました。両親はずいぶん前に離婚していて、潮田さんは一人娘だったためシンプルな相続だったそうです。母親が遺したのは預貯金と実家。自宅を処分する際には、税制優遇を受けるため空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度を利用しました。また潮田さんは母親が存命のときに、遺産の内容を確認していたとのこと。そのおかげで事前に知識を蓄えながら心の準備をした上で相続に挑め、実家の売却と同時に相続を完了させました。

解説者プロフィール

解説者プロフィール

本間慶喜税理士事務所 所長

本間 慶喜

会社員、役員としての経験や税理士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(CFP)などの資格を生かし、総合的なコンサルティングを提供しています。相続についても申告業務だけでなく、相続対策などのご相談も承っております。

「失敗したくないから」専門家に手伝ってほしい

潮田様とは、もともと共通の趣味の会で知り合った仲でした。お母様が亡くなる数年前、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度の法改正について聞かれ、説明したことをよく覚えています。潮田様は個人事業主として普段から節税へのアンテナを張っていたため、相続に関する制度の情報もいち早く仕入れられたのでしょう。法改正により「自分の実家も対象になるのでは」と思い至ったと話していました。ひとり娘の潮田様はお母様に遺産の内容を確認済みなこともあり、少しずつ下準備を進めていたようです。

そしてお母様が亡くなって半年ほど経った頃、「相続の手続きを手伝ってほしい」と連絡をいただきました。ご自身で諸手続きについて調べた結果、自分では対応が難しい部分を専門家にお願いしたいと考えたそうです。

まずは遺産の名義変更から

潮田様から遺産の全容を伺うと、預貯金とご実家のみとのこと。 遺言書 はないものの、相続人は潮田様のみで、お母さまからご実家を処分する許可は取っていたそうです。ご実家の売却については「空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度を利用したい」と以前から伺っていたので、このタイミングで制度を利用する上での注意点をお話ししました。「誰かに貸してしまうと制度を利用できなくなる」などの情報を事前にお伝えしておかないと、いざ制度を利用しようした際にできなくなる恐れがあるからです。

潮田様には今後の手続きの流れを一通り説明し、まずは預貯金と実家の名義変更を進めることになりました。私はまずそれらの手続きに備えて 遺産分割協議書 を作成。本来、相続人が1人の場合は必要のない書類ですが、万が一のトラブルに備えて文書で残しておくことを潮田様がご要望されました。その間に潮田様には戸籍謄本など必要な書類を集めていただき、一式揃ったところで、名義変更の手続きに取りかかったのです。その後、私は 相続税 申告書の作成・提出を進めました。

売却の可能性を高めるため、ノウハウを持つ不動産会社を紹介

数か月後、「そろそろ実家を処分したい」と再び潮田様から連絡をもらいました。空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度を利用する場合、住まなくなって3年目の12月31日までに売却しなければならないのですが、この時点で家主であるお母様が亡くなってから1年ほど経過。まだ時間があるように思えますが、売却先がすぐに見つかるとは限らないので、急ぐに越したことはありません。

私はすぐに売却に向けて動くことを提案するとともに、空き家の活用・売却が得意な不動産会社を紹介しました。以前、代表の方と空き家問題をテーマとしたセミナーで全国を回ったことがあり、事業内容や特色を知っており、安心して任せられると考えたのです。

残すは確定申告で特別控除制度の利用申請するのみ

不動産会社を紹介してから数か月後、潮田様から「実家が無事に売却できた」と連絡を受けました。潮田様の相続手続きはここでほぼ完了になりますが、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度の利用申請が残っています。これは確定申告のタイミングで申告する予定です。

税金に関する書類は、多くの人にとってなかなか書く機会がないもので、難しく感じるかもしれません。たった1ヶ所、書類に不備があるだけで控除を受けられなくなるなど、とてもシビアなものなので、少しでも不安を感じている方は私たちのような専門家に依頼されるのがお勧めです。


この記事にまだコメントはありません

アクセスランキング