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利用可能な税金控除制度 手続きの不備を恐れて各専門家へ委託

2022/10/11

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相続は、いざ“その時”がくると「遺産は何があるのか」「誰が相続人か」など疑問点だらけで慌ててしまうケースが少なくありません。今回お話を伺った潮田さんの場合、生前にお母様と相続について話ができていたため、慌てることなく落ち着いて対処できたそうです。またお母様が亡くなる数年前に空き家を処分する際に節税できる制度があると知り、個人事業主で普段から節税意識が高かった潮田さんは「タイミングがあったら利用しよう」と考えていたとのこと。実際にどのように相続を進めたのかを伺いました。

この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

潮田 真理子さん(仮名)

60歳。東京都内在住。
生前に母親と相続の話をしていたことで、知識を蓄えながら心の準備をした上で相続に挑めた。

長い老人ホーム生活の中で大往生した母

母は10年ほど前から老人ホームに入所していました。それまで母が一人で暮らしていた実家は入所を機に空き家になったため、私はそれ以降1〜2週間に一度、母がいる老人ホームに行っては、その帰りに実家に寄って家屋が傷まないように風を通す日々を送っていたのです。

もう誰も住んでいないのですから、この間に処分する選択肢もあったと思います。けれど名義が私と母の共有になっていて手続きが煩雑なのと、私と夫がなんだかんだと物置がわりに使っていたことから、母が存命中は処分を見送っていました。

そんな中、老人ホームから母の訃報が届きます。悲しみはあったものの「ああ、とうとうその日がきたか」と、思ったより冷静に母の死を受け入れられました。10年と長きにわたって母に会うために老人ホームへ通う日々が、ゆっくりと私に心の準備をさせてくれていたのだと思います。

絶対に手続きを間違えたくない!だからプロに依頼した

母が亡くなって半年ほど経ち、相続の手続きを始めることにした私は、まず知り合いの税理士に連絡をしました。何年も前に趣味の会で知り合い、以前から相続について相談していたのです。相続の手続きは自分でできると知っていましたが、手続きに必要そうな 遺産分割協議書相続税 申告書などの作成は、毎年おこなっている確定申告よりだいぶ難しそう。到底自分でやり切る自信が持てなかったのです。

それに私は数年前に、「空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度(空き家を相続・処分した際の税金が控除される)」が法改正して、母のように老人ホームに入所していた場合も適用されると知り、それ以来「タイミングが合ったら利用しよう」と考えていました。この制度を利用するかどうかで納める税金がだいぶ変わるため、手続きを間違えて制度を利用できないリスクは避けたい。こうした理由から、その道のプロである税理士に相続手続きを依頼することにしました。

生前に確認した母の遺産は預貯金と実家

母が老人ホームに入所した際に、お金の管理を任された流れで母の財産は確認してありました。そのときに聞いた情報どおり、遺してくれたのは預貯金と実家(母が暮らしていた自宅)でした。また母はだいぶ前に父と離婚しており私は一人娘だったため、 法定相続人 は私のみ。誰かと揉める可能性がない、ある意味とても気が楽な相続でした。

相続の手続きにあたり、税理士がまず作成してくれたのが遺産分割協議書です。私のように1人だけで相続する場合はなくても良いのですが、今後の手続きで必要になることがあった場合に備えて作成してもらったのです。そして私が最初に取りかかったのは、母の預貯金の口座を解約して私の口座に移行すること。幸いすべての通帳は私の手元にありましたので、各金融機関の案内に従って粛々と手続きをしました。その間、税理士は相続税申告書の作成・提出を進めてくれていました。

母の死から立ち直り、実家の処分を決意

次に取りかかったのが実家の処分です。しかし実際に手をつけたのは相続の手続きを始めた半年後、つまり母が亡くなってから1年後のことでした。私には母との思い出が色濃く残る実家を、すぐに処分することができなかったのです。生前は相続したあとのことを冷静に考えられたのに、いざ亡くなるとなかなか手がつかないものなのですね。

実家は千葉県西部にありました。自宅がある東京都内からは少し距離があるものの、母の存命中は1〜2週間に一度、風を通しに行っていました。しかし母が亡くなってからは「母に会いに行ったついで」という名目がなくなったため、なかなか足が向かなくなり、2か月に一度通うのがやっとでした。広い庭の雑草処理は年2回、シルバー人材センターの方に依頼していたので、近隣に迷惑をかけるような荒れ果てた状態になることはありませんでしたが、実家を所有していること自体が負担になってきたため、気持ちの整理がついたタイミングで売却を決意したのです。

売却に向けて、自分たちの荷物と思い出の遺品を整理

税理士に「空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度を利用して実家を処分したい」と連絡すると、空き家の活用や売却が得意な不動産会社を紹介してくれました。

さっそく不動産会社に相談に行くと、担当者が「制度を利用したいのなら、更地にした方が良い。100坪と広い土地で個人向けに販売するとなかなか売れない可能性があるので、法人向けに販売するのがお勧め」と提案してくれたのです。提示してくれた売却想定価格も納得いくものだったので、おっしゃる通りに進めてもらうことにしました。

売却の方針が定まったところで、次は家財の整理に取りかかりました。実家は母が老人ホームに入所して以降、私と夫の物置き代わりにもなっていたので、母の遺品を整理するだけでなく、私たちが置いていた荷物の行き先を決めなければならなかったのです。特に夫の趣味のサーフボードや自転車など場所を取るものをどこに置くかは頭を悩ませました。結局、コンテナを借りて置くことにし、母の遺品や不要なものは、不動産会社が紹介してくれた遺品整理業者に引き取ってもらいました。

相続は完了したけれど、確定申告までは気を抜けない

その後、実家は家屋を取り壊して更地にした上で無事に売却でき、相続が完了しました。一連の手続きが終わって肩の荷が降りたものの、実はまだやることが残っています。それは空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の制度の利用申請です。来年の確定申告時に申請するので、いまは必要書類を揃えています。

年末ごろになったら、揃えた必要書類を手に税理士に連絡し、確定申告を進めてもらう約束をしています。そうして確定申告を終えたら、相続に付随した手続きまですべて完了。来たるその日まで気を抜かないように気をつけたいと思います!


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