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「遺言書」の意味がない!遺言の内容が曖昧すぎて壮絶な兄妹喧嘩に

2023/12/7

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

金子 智史(仮名)

埼玉県在住。69歳。
父が残した曖昧な内容の遺言書をめぐって、ただでさえ関係の良くない妹と大喧嘩。遺産をどのように分割すれば、お互い納得できるのか話し合いを重ねるも決着はつかず、ついには調停へ。

父が残した遺言書…その内容は「~くらい」で分割?

私は現在、父の遺産における 遺産分割協議 で妹と揉めています。というのも、父が残した 遺言書 の内容があまりに曖昧だったからです。

父の遺言によると、「私の遺産は長女である久美子に1/3か1/4くらいの割合で分割するように」というもの。「~くらい」と言われても、具体性がなく私も妹も納得できるはずがありませんでした。かなりの額が遺されていたため、1/3か1/4かで大きく金額が変わってきてしまうのです。双方、譲れるはずがありません。

私としては、妹の取得分が1/4であれば納得してもいいかなという気持ちはあります。しかし、妹は一切譲る気がありません。「私はお父さんの面倒をずっと見てきた。兄さんは私以上に何かしてあげた?私は1/3だって少ないと思ってるわ」「俺だって親父の面倒は見てきたぞ。自分だけ面倒を見てきたような言い方をするなよ!」。

もう1通出てきた遺言の内容でさらに困惑

話し合いは平行線。そんな中、実家を整理していると遺言書がもう1通出てきたのです。
その内容は、「私の遺産は原則として長男である智史に一任する。久美子は智史のやり方に従ってください」というものでした。作成日付が手元にあった遺言書より古いものであったため、この遺言が有効でないことくらいは私にもわかります。それにしても一度は私に一任する気持ちがありながら「なぜ考えを変えてしまったのか?」と困惑するのと同時に、余計に相続分を減らすなんて納得できないという気持ちが強まりました。

しかし、このままではいつまで経っても話し合いが進展しないため、私は知人から紹介された相続コンサルタントに相談することにしました。すると、私と妹、そして相続コンサルタントを交えた上で一度話し合いをしませんか?という提案をもらいました。

確かに、妹と2人で話し合いをしていてもこれ以上の進展は見込めません。有識な第三者を交えることで新たな解決策が出るかもしれません。

最終的に話し合いの場は調停へと移行

その後、相続コンサルタントには何度も話し合いの場を設けてもらいました。しかし、話し合いはそれでも進展せず、ついには業を煮やした妹が弁護士を立てて家庭裁判所の調停手続きを申し立ててきました。

調停では、調停委員による双方の言い分の聞き取りを重ねましたが、結局は平行線です。また、調停が開かれるのは1か月に1度程度だったため、事態が中々進まない状況にストレスを感じる日々が続きました。

調停の話し合いが始まってから1年半程経ったころには、私も妹もすっかり疲れ切ってしまい、最終的にはお互い折れるような形で合意へと至りました。

もし、父に今からでも言葉を伝えることができるならば、「もっと明確な遺言にしてくれ!」と声を大にして言いたいものです。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

私たちは誰もが、生前に最後の意思表示として「遺言」を残すことができます。そして残された相続人は、原則として遺言の内容に従って遺産分割をすることになります。しかし、作成された遺言書が「自筆証書遺言」だった場合、法的不備が生じるリスクが高いため注意が必要です。自筆証書遺言とは、本人の手で 財産目録 を除いた全文を記す遺言方式です。作成費用はかかりませんが、1つでも法的不備があれば無効になりかねません。

本事例では、お父様の作成された自筆証書遺言の相続割合の記載が曖昧あったため、相続人であるご兄妹はスムーズな遺産分割をすることができませんでした。

このように、遺言書がきっかけとなって相続人同士の溝が深まるケースは珍しくありません。遺された家族がこのような事態になることを防ぐためにも、誰に何を相続してほしいのかを明確に記載することが大切です。作成が不安な方は、遺言書の内容に問題がないか専門家にチェックしてもらうのが良いでしょう。

なお、 公正証書遺言 であれば、公証役場の公証人が法的不備をチェックしてくれるため、本事案のような事態は起こり得ません。また、作成された遺言書は公証役場に保管してもらえる安心もあるため、より確実に遺言どおり相続してほしい方は、ぜひ視野に入れてみてください。

解説者プロフィール

山口 進

株式会社北斗ハウジング

山口 進

相続に関するコンサルティング会社を経て、現職では相続のみに関わらず、空き家問題の解決を包括的におこなう事業に従事。相続に関する相談に対し100件以上対応しており、相続が関連してくることが多い空き家問題の解決に向けて、様々なお悩みを抱えるお客様と一緒になって解決できるよう、業務に取り組んでいます。


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