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事前に専門家に相談してよかった!自分で作成した「自筆証書遺言」に課題発見!

2024/2/9

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

伊井田 文江(仮名)

東京都在住。70歳。
脳の疾患がある夫と2人暮らし。義母の相続時に夫の妹と揉めた経験から、トラブル予防のため夫婦で遺言書を作成。

もう相続争いはしたくない!夫婦で自筆証書遺言を作成

私は夫と2人暮らしで、子どもはいません。夫は数年前から脳の疾患によって、日常生活は送れるものの外出は難しい状態が続いています。ある日、今後の生活について話し合ったときに、夫婦で遺言書を用意しようという話になりました。

実は、夫には妹がいるのですが、夫の母が亡くなったときに相続でとても嫌な思いをした経験があります。義妹は義母の遺産は何でも欲しいという感じで、夫と大揉めしました。義母は「誰に何をどれくらい」といった遺言を残しておらず、最終的には弁護士さんにお願いして遺産分割調停をしたほどです。

夫に万が一のことがあったとき、遺言書がなければ夫の財産を私と義妹で分割することになります。このままでは、また義妹と揉めることは明らかで、それに備えるためにも夫婦それぞれで遺言書を書くことにしました。

自分で書いた遺言内容に問題はない?念のため専門家へ相談

夫は病気のため、長時間外出したり人と会ったりするのが難しい状態です。最初は、内容の不備で揉めることがないように、確実な形で遺せる公正証書での遺言書を作成しようと検討していました。しかし、日によって体調にムラがある夫の状態を考えると 公正証書遺言 を作成するのは難しいと考え、夫と私は自分で手書きする「自筆証書遺言」を作成することにしました。夫は義妹に相続分が渡らないように、「全額妻(私)に相続させる」と書いていたようです。私は相続してほしい人がいないので、遺児を支援する財団法人と知り合いが運営しているNPO法人に、遺産を均等に分けて 遺贈寄付 する旨を遺言書に書きました。

しかし、自分で書いた遺言書では、形式や内容が合っているのか不安なため、夫婦それぞれの遺言書を持って知り合いの行政書士に相談へ行きました。

遺言の内容に課題が!専門家の指摘で気が付いたこと

行政書士に夫と私の遺言書を見てもらうと、「この遺言書にはいくつか課題があります」と言われました。

まず、私たちの遺言は夫が先に亡くなった場合のみ効果があるということです。現在の遺言書の通りに相続すると、私が先に亡くなったとき私の財産は夫に残らないことになってしまいます。夫は持病がありますが、だからといって私と夫ではどちらが先に亡くなるかわかりません。どのようなケースでも希望通りの形で財産を相続できるように、しっかり考えたうえで遺言書にする必要があると言われました。

2つ目は、私の遺贈先です。知人が運営しているNPO法人は規模が小さく、私の相続が開始した時点で存在しているかが不確かだということでした。遺言書に遺贈寄付先を記載していても、その団体が存在しなければ遺贈はできなくなります。また、遺贈寄付をするときは寄付先の条件を事前に確認して、確実に受け取ってもらえるようにすることが大切とのこと。

遺言書についての本を参考にしてしっかりと書いたつもりだったので、行政書士に指摘されるまで、内容に課題があるとは思いませんでした。夫と話し合いながら遺言書をもう一度書き直し、改めて行政書士に見てもらおうと思っています。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

法定相続人 になりうる家族との関係があまり良くない場合、相続争いを避けるために遺言書は効果的です。しかし、形式が誤っていたり内容に不備があったりすると、せっかく書いた遺言書が無効になる可能性もあります。そのようなリスクを避けるためにも、自筆証書遺言を作成するときは、書き終えたあとに専門家に確認することをおすすめします。その後、紛失を防ぐために、 自筆証書遺言書保管制度 を利用して法務局に預けるのも良いでしょう。

今回のご相談者様は、旦那さんの妹さんと相続で揉めることを避けたいという気持ちが強かったことが、遺言書を作成するきっかけになっていました。遺言書を作成すること自体はとても大切なことですが、その内容も様々なことを想定した内容にすることが必要です。

本事例では、旦那さんに持病があることから、ご夫婦ともに先に亡くなるのは旦那さんのほうだと思い込んで遺言書を作成していました。しかし同世代のご夫婦の場合、どちらが先に亡くなるのかは誰にもわかりません。ですので、どちらの場合にも有効な遺言書を作成することが大切です。

また、遺贈先については法人や団体であっても個人であっても、相手が受け取りを拒否すれば希望通りの遺贈は叶いません。遺言書を書く前に遺贈先に連絡して、遺贈の条件などを確認するようにしましょう。

解説者プロフィール

行武 綾子

ことり行政書士事務所

行政書士

行武 綾子

埼玉県所沢市で相続関連を中心に業務を行っています。遺言書があれば防げた相続トラブル、認知症になる前にやっておけば防げた事態、そういった事例を数多く目の当たりにし、事前の備えの重要性を感じています。元気なうちから気軽に対策に取り組んでいただけるよう、積極的に講座やセミナーで情報発信を行っています。


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