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遺留分侵害額請求で最低限の母の遺産を取り戻すことができた

2023/3/27

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

田中 芳美(仮名)

千葉県在住。52歳。
母の介護を献身的におこなっていたにも関わらず、母の遺言には全財産を妹に相続させる内容が。悔しい思いをしながらも遺留分侵害額請求で最低限の遺産を相続できた。

まさか!妹に全財産を相続させるとの母の遺言に思わず涙

父の死後、衰えが目立つようになった母。未婚の妹が実家に戻り、同居して面倒を見ることになりました。しかし、1年もしないうちに、妹が介護負担の重さを訴えたため、母には介護施設に入ってもらいました。

母の施設入居後は、妹はほとんど施設に顔を出さず、施設との連絡窓口を務めるなど、主に母をケアしていたのは、私でした。母が亡くなったのは、2022年の春のこと。相続人は私と妹の2人、母の遺産は、時価2,000万円弱の実家と約2,000万円の銀行預金です。

妹は持ち家がなく、実家で暮らしているため、妹が実家、私が銀行預金という形で1/2ずつ相続すればいいかと考えていた矢先、妹に「話がある」と呼び出されました。そこで妹に見せられたのは母の公正証書遺言の写し。それは、妹に全財産を相続させるという内容でした。日付は、妹が実家に戻った直後の日付。甘え上手でしたたかな妹が、母をたくみに誘導して書かせたのでしょう。

亡くなる数日前、母が私の手を取り、「本当に申し訳ない。ごめんね」と繰り返し、涙を流していたこと思い出し、このことについて謝っていたのかと、今更ながら理由がわかりました。

「お姉ちゃんは、家もあるし、家族もいる。別に困らないじゃない。遺言の効力は絶対だからね」と不敵な笑みを浮かべる妹。悔しさと情けなさで私は涙が止まりませんでした。

夫と弁護士のサポートで、遺留分侵害額請求権を行使することに

帰宅後、このことを夫に話したところ、「確か遺留分というのがあって、ある程度の金額を取り戻せるはず」とのこと。夫は、その場で知り合いの弁護士に電話してくれました。

数日後、夫婦で弁護士と面談。弁護士の話では、一定範囲の相続人には遺留分という最低限の遺産の取得分が認められているとのこと。今回、私の法定相続分は1/2。さらにその1/2が私の遺留分だそうです。母の相続財産は、4,000万円弱ですので、私の遺留分は1,000万円弱ということになります。「遺留分侵害額請求権という権利を行使して、遺言によって侵害された遺留分を取り戻しましょう」と弁護士からの提案で、早速、妹宛に内容証明郵便を送付してくれることになりました。

無事に遺留分侵害額の取り戻しに成功。したたかな妹の対策に舌を巻く

内容証明郵便が届いたと思われる頃、妹から電話がありました。「あ~あ。お姉ちゃん、気づいちゃったか」と妹。聞けば、妹は遺言内容が私の遺留分を侵害していることは百も承知で、私から請求があった場合に備えた対策もしていたそうです。「遺言の作成を手伝ってくれた司法書士のアドバイスで、お母さんに1,000万円の生命保険に入ってもらっておいたの。死亡保険金の受取人は私。そのお金で支払えるから、安心して」

こうして、私は妹から遺留分を取り戻すことができましたが、妹のしたたかさには怒りを通り越して舌を巻きました。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

兄弟姉妹を除く相続人(配偶者、子、直系尊属)には、「遺留分」という最低限の遺産取得分が認められています。遺留分は、基本的に「法定相続分の1/2」ですが、直系尊属のみが相続人となった場合は、例外的に「法定相続分の1/3」となっています。

遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求権」を行使し、侵害された遺留分を取り戻すことができます。なお、遺留分侵害額請求権の行使については、以下のような期間の制限があります。

・相続の開始および遺留分の侵害のあったことを知ったときから1年(消滅時効)
・相続の開始から10年(除斥期間)

これらの期間の経過後は、権利を行使できなくなりますので注意が必要です。内容証明郵便を利用することで、「確実に期限内に請求した」ことが明らかになります。

遺留分を侵害する内容の遺言は無効ではありませんが、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額請求権を行使するリスクがあります。この場合、請求を受ける相続人や受遺者に遺留分侵害額を支払えるだけの資力があるかどうかが問題となります。本事例のように、生命保険を活用した対策も知られています。

解説者プロフィール

木下 正一郎

きのした法律事務所

弁護士

木下 正一郎

1990年、早稲田大学卒業後、一般企業に勤務。2001年、弁護士登録。2004年10月、きのした法律事務所開業。医療問題、医事事件に強く、相続問題、成年後見、不動産問題等への対応にも定評。東武練馬駅に近い事務所には、近隣住民からの相談も多く、気軽に相談できる「地元の弁護士事務所」としてリーガルサービスの提供に努めています。


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