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知らなかった事実! 嫁は義理の親の「相続権」はない

2023/5/2

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

三上 清子(仮名)

千葉県在住。65歳。
義母が亡くなったら義母の自宅を相続できると思っていたが、嫁である私には義理の親の相続権がないことを知る。しかし義母との養子縁組をすることで相続人としての立場を確保し、無事に相続できた。

知らなかった!嫁には義理の親の相続権がない

私は“長男の嫁”として、義父が遺した家に義母と2人で住んでいます。義父は30年前に死去。家は義母が相続し、義母が亡くなったら長男である私の夫が相続するはずでした。ところが、その夫が交通事故で急死したのです。

夫が相続するはずの家ですから、夫がすでに亡くなっていたとしても、嫁である私が相続できると思っていました。義母の死後は、余生をこの家で過ごせばいいと心積もりをしていたのです。ところが、テレビ番組を見て初めて知りましたが、「嫁には義理の親の相続権がない」というではありませんか。となると、義母の家は、亡くなった夫の弟が相続することになってしまいます。

「住む家がなくなってしまったら、私はどうやって生きていったらいいのだろう……」

不安にかられて、私は知り合いの司法書士に相談しました。

すると司法書士は、「お義母さんに遺言書を作成してもらい、あなたが今の家に住み続けられるように書いてもらったらいかがでしょう」と提案してくれました。そこで、義母に遺言書の作成を頼むと、「死んだ後のことは言われたくないのよ、断るわ」という言葉が返ってきました。

義母に親子の関係を認めてもらいたくて養子縁組を相談

義母から遺言書の作成を断られたことを司法書士に報告すると、次の対策として「お義母さんに、あなたとの養子縁組を持ちかけてみましょう」と提案してくれました。養子縁組をして義母の「実の娘」となれば、自宅を含む相続財産に対する権利を相続人として主張できるようになるといいます。

そこで、養子縁組を義母に持ちかけてみたところ、今度はあっさりと承諾してくれました。私は義母に長男の嫁として、長年尽くしてきています。義母が大腿骨を骨折して寝たきりになってからは、施設入所もデイサービスも嫌がる気難しい性格の義母を、大変な思いをしながら一人で介護をしてきました。遺言書の作成は断られたものの、何かしらの形で私にも財産を遺してやりたい、と思ってくれたのかもしれません。

終の住み処を確保できて、ひと安心

私との養子縁組をおこなった後、ほどなくして義母は亡くなりました。義理の弟と私とでの遺産分割協議は、養子縁組で相続人としての私の立場が確保されていたこともあって話はスムーズに進みました。

協議の結果、義母の自宅は私が相続して私が死ぬまではそこに住み、私が死んだら義理の弟が相続する、という内容となりました。

これでようやく、これからの余生を今の家で、安心して過ごすことができるようになりました。さまざまな提案・支援をしてくれた司法書士には本当に感謝しています。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

お嫁さんは、義理の親の世話や介護を担う立場になることが少なくありません。であるにも関わらず、義理の親の遺産相続では、相続の権利がないのです。

この不公平を解消しようと、2019年に「特別寄与制度」が作られました。特別寄与制度とは、被相続人への献身的な介護などで、財産の維持・増加に貢献していた相続権のない一定範囲の親族がいた場合、寄与の度合いに応じた金銭を相続人に請求できる制度です。

しかし、特別寄与制度で金銭を受け取るためには、まず相続人と協議をし、全員の合意を得なければなりません。もし協議がまとまらなかった場合には家庭裁判所への申立も必要です。当事者が利用するにはハードルが高い制度といえるでしょう。

その点、養子縁組は、合意が必要なのは義理の親だけ。特別寄与制度と比べ利用のハードルが低く、相続人としての権利を主張できるようになります。相続の場面においては、非常に強力な手段となるでしょう。義親の相続人としての立場を確保したい場合は、養子縁組も検討してみるとよいと思います。

解説者プロフィール

吉田 崇子

吉田司法書士事務所

司法書士

吉田 崇子

2006年に吉田司法書士事務所を開設。不動産登記(売買、相続、贈与など)、商業登記(会社設立、役員変更など)、成年後見、遺言書の作成など時間をかけてご相談者に寄り添いながら最善の解決方法を提案させていただくことを心がけています。


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