不安も苦労もなく相続が完了したのは、生前の準備のおかげ
2022/9/22
相続人となった場合、煩雑な手続きや親族との込み入った話し合いが発生するなど、大変な印象がありますが、お兄様の相続人となった平野さんの場合は、それらが一切ありませんでした。その理由として、被相続人である平野さんのお兄様による生前の入念な準備があります。実際にどのような相続がおこなわれたのか、平野さんに振り返っていただきました。
もくじ
この相続事例の体験者
平野 梅さん(仮名)
80歳。大分県在住。
埼玉県に住む兄から、妹である自分を相続人とする相談をされる。相続時に揉めないよう、遺言の準備や自宅の売却など、考えられる限りのことを生前に準備してくれた兄に感謝している。
義姉の死をきっかけに、自身の相続を考え始めた兄
兄は義姉の死をきっかけに、自分の死後について深く考えるようになったようです。財産をどうするか、いま住んでいる自宅をどうするか。そもそも子どもがいない自分にとって、誰が相続人なのか。調べてみたら 法定相続人 が私を含め甥姪など17人もいたようです。
17人の法定相続人の中には、普段関わりのない親戚もいます。自分の死後、彼らに迷惑をかけないためにも、兄は義姉が亡くなったときにお世話になった行政書士に相談して、誰に何を相続させるかを明確に指定する 遺言書 を作成することにしたそうです。
私の事情を配慮して、生前に自宅を売却
遺言書を作成するにあたり、最初の行動として行政書士に指示されたのは財産の整理だったようです。兄の財産は預貯金以外に、自身が暮らしていた埼玉県の自宅がありました。生前、この自宅を私に譲ろうとしてくれたのですが、私は大分県在住です。受け取ったところで使う予定もなく、管理するのも大変なので、その申し出を断ったところ、しばらくして老人ホームへの入居を機に売却し、現金にして遺すことを決めてくれました。
思いやりに溢れた遺言書を作成後、老人ホームへ
その後、兄の自宅で完成した遺言書を見せてもらいました。その内容は「全ての財産を妹(私)が相続し、かつ妹(私)が先に逝去した場合は妹(私)の娘たちが相続する」というもの。加えて遺言執行者に遺言書の作成を依頼した行政書士を指定し、相続人である私がその方の指示に従うだけで、相続が滞りなく完了するようにしてくれていました。私に苦労をかけないように配慮されていて、とても家族思いの兄らしいなと思ったものです。
数ヶ月経って兄の自宅の売却先が決まり、長年暮らした自宅から引っ越す日、なんと近所の方が20名近くも見送りに来てくれました。口々に「元気でね」「寂しくなるわ」と名残惜しそうにしてくれて。兄のここでの暮らしは、きっと幸せだったのだなぁと嬉しく思ったものです。
兄が亡くなり、不安を抱えながらも遺言執行
数年後、老人ホームから兄の訃報が届きました。覚悟はしていたものの悲しみが胸に応えましたが無事に葬儀などを終え、遺言執行についての打ち合わせをするため、 遺言執行者 である行政書士がいらっしゃる埼玉県に赴きました。
行政書士は「心配しなくて良いですよ。遺言執行者に指定された私が、遺言者であるお兄様の遺言に従い責任をもって執行します」と説明してくださいました。
けれど雑誌やテレビなどで相続は大変と聞くのに、本当に私は何もしなくて良いのかと最初は不安で。兄から「行政書士に任せておけば大丈夫」と聞いていたものの、居ても立っても居られない気持ちでした。しかし行政書士が一つ工程を進めるごとに進捗を丁寧に報告してくれましたので、少しずつ安心できるようになりました。
胸に残ったのは兄への感謝
行政書士に銀行名義の変更など、各種手続きを終えていただくと、私の口座に遺産が振り込まれ、相続は無事完了しました。こうして私が何もせずともスムーズに相続できたのは、兄が生前にきちんと準備してくれたからなのでしょう。兄の心遣いに感謝するとともに、生前準備の大切さを実感しました。
私も娘たちに相続で迷惑をかけたくないので、兄を見習ってしっかりと準備しておこうと思います。