放置して良いことは無い!「相続登記」を父がしていなかったことで想像以上に大変なことに
2023/6/29
もくじ
この相続事例の体験者
江守 仁志(仮名)
東京都在住。50歳。数年前に父が亡くなり実家を相続。登記もせず放置していたが、いざ登記変更手続きを始めると、父も相続登記をしていなかったり実家以外の相続不動産もあったりと、想像以上に大変な思いをすることに。
5年放置していた実家の相続登記を開始
ひとり息子が大学を卒業し、無事に入社式を迎えた2022年の春。これで子育てが終わったのだなとひと息ついた私の脳裏に浮かんだのは、5年前に亡くなった父から相続した不動産のことでした。父が亡くなった当時は息子が大学受験を控えていて忙しかったため、預貯金の相続手続きだけ終わらせて、不動産の 相続登記 は後回しにしていたのです。
相続したのは祖父が建て父が受け継ぎ、私も上京するまで暮らしていた秋田県にある実家です。近隣にはいまだに親族が暮らしているものの、私自身はもう何十年も訪ねていません。使う予定も無く、これ以上放置しても何も良いことはないでしょう。私は重い腰を上げ、5年越しに動き出すことを決意しました。
実家の名義は祖父のまま!さらにほかの不動産の存在も
インターネットで相続登記のやり方について調べてみると、自分でやるより司法書士に依頼する方がスムーズだと思ったので、近隣の司法書士を探し、お願いすることにしました。
司法書士に状況をお話しすると「まずは相続する不動産と他の 法定相続人 の有無について調べてみましょう」とのこと。家の登記簿や 名寄帳 、図面などを取り寄せて、所有する不動産の数や他に相続人はいないのかを明らかにする必要があるそうです。
すると数日後「相続登記の完了までには、思ったより時間がかかるかもしれません」と告げられたのです。
司法書士が言うには、実家は父の代で相続登記されておらず、未だ祖父の名義であるとのこと。また近隣の土地をいくつか一族で所有しており、そのうち10年前に亡くなった叔父の名義のままになっている土地も、私と3人の従兄弟に相続権があることが分かりました。
こうなると、実家を含め誰がその不動産を相続するのか従兄弟と話し合う必要があるらしく、私一人の手続きでが相続登記が完了できる状態ではありません。「面倒なことになりそうだな」と思いながらも、従兄弟の連絡先を司法書士に調べてもらい、「 遺産分割協議 をおこない不動産の登記変更手続きをしましょう」と手紙を送ってもらいました。
10ヶ月に渡る話し合いでようやく相続登記が着地
従兄弟はみんな東京近郊に住んでおり、自分が相続する不動産があることを何となく知っていた人もいれば、全く知らなかった人もいました。そして司法書士を通して対象の不動産について説明されると「いらない」「とりあえずもらっておこう」「売れるのならもらいたい」など、さまざまな意見が聞こえたのです。私自身は、もらっても使う予定は無いものの、相続するかどうかは、すぐには決めかねました。
結局、私たち4人は相続することにしましたが、次はどう分けるかを相談することに。話し合いは、実際には会わず電話やメールだけでやりとりしたこともあり、難航しました。司法書士が間に入ってくれて、ようやく話がまとまったのは10ヶ月後。まとまった内容で 遺産分割協議書 を作成し、全ての手続きが完了したときはドッと肩の荷が降りた気分でした。
司法書士に問い合わせた時点では実家を私1人で相続するだけだと思っていたのに、まさか、こんな事態になるとは。不動産を相続したらすぐに登記変更することが、自分の子や孫のためになるのだなとつくづく実感しました。
担当した専門家が解説!
「ここがポイント」
相続登記をしようと思ったら、名義がずいぶん前に亡くなった祖父や曾祖父だったなどのケースは、決して珍しくありません。この場合、本事例のように遠い親戚と協議が必要になるなど、相続登記の手続きは煩雑になります。
登記手続きの際には被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。面倒だからと相続登記を放置すると、その間に相続人が亡くなることで、その家族が今度は相続人になるなど、相続人が増えていきます。つまり必要な戸籍も併せて増えることになり、このような書類集めだけでも時間と手間がかかってしまうのです。
相続登記は放置しても良いことはありません。不動産を相続したら、できる限り早めに手続きをおこないましょう。
解説者プロフィール
手塚司法書士事務所
司法書士
手塚 宏樹
平成17年司法書士事務所を開業以来、一貫して相続手続きのお手伝いをしています。不動産の名義変更や、銀行の口座解約、それらにともなう戸籍謄本等の資料収集や遺産分割協議書の作成などをお客様にかわって行っています。遺言など、ご相続が発生する前の生前対策も得意です。