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「相続登記」をしてなかった!相続した実家の売却で大慌て!

2023/9/29

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

木島 遼平(仮名)

神奈川県在住。57歳。
相続した実家の思いがけない売却の話に喜ぶも、忙しさにかまけて相続登記をしていなかったことから、慌てて手続きをする事態に。

思いがけず訪れた実家売却の話

私の実家は栃木県宇都宮市の郊外にあります。1人で暮らしていた母が亡くなったのは2年前。相続人は私と弟と妹の3人でしたが、私は都内、弟は仙台、妹は埼玉で暮らしているため、実家は空き家になってしまっていました。すぐに売るのも何となく躊躇われ、かといって放置しておくわけにもいかず、きょうだい3人でお金を出し合って、シルバー人材センターに庭木の剪定や草刈りなどの最低限の管理をお願いしていました。

そんなある日、高校時代の友人から久しぶりに電話がかかってきました。地元の不動産会社に就職した友人は、10年ほど前に独立し、小さな不動産会社を経営しています。「お前の実家の隣の伊藤さん。娘さん夫婦と同居しているんだけど、この間、3人目のお孫さんが生まれたんだって。さすがに手狭になってきたみたいで、お前の実家を買い取って、娘さんたち家族の家を建てたいらしい。いい話じゃないか!」と興奮気味に話す友人。先方の購入希望価格についても、当方は全く異存ありません。弟と妹にすぐに連絡しましたが、2人とも良い機会と大変喜んでいました。

売却のために相続登記を促されるも面倒で放置

私は改めて実家を正式に売却したい旨、友人に伝えました。「それは良かった。ところで、お前の実家、亡くなったおふくろさんの名義のままだろう?すぐに 相続登記 の手続きをしておいてくれよ」と友人は言いました。確かに母が亡くなった後、預金は銀行に案内された手続きに従って3人で平等に分けたのですが、実家の相続登記は面倒臭そうだったので、放置してしまっていた経緯があります。友人には「わかった」と答えたものの、仕事が忙しかったこともあり、またしても手続きをしないでいました。

買主側から催促され慌てて手続きを進める

それから1ヶ月後、「相続登記の手続き、いつ頃終わる?」と友人から電話がありました。すっかり忘れていた私は「しまった!」と思いながら「実はまだ何もやっていない」と消え入りそうな声で答えました。買主側から確認があったようで「それは大変だ!」と友人は相続登記手続きのための司法書士との面談をすぐに取りもってくれました。

さっそく相談すると、既に亡くなっている母親から、買主に実家の所有権を直接移転することはできないため、決済をおこなう前までに相続登記を済ませ、相続人の名義に変えておく必要があるとのこと。そして、購入者が住宅ローンを利用する場合、購入する不動産の相続登記の完了が融資条件となっていることが多く、相続登記が完了しないうちは融資が実行されず、売買が滞ってしまうことがあると、司法書士はわかりやすく説明してくれました。

その後、司法書士は、私の名義で登記する形でテキパキと手続きを進めてくれ、相続登記は無事完了。何とか買主さんに迷惑をかけず、実家の売却を終えることができました。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

相続した不動産を売却する場合、原則、売買契約締結前に相続登記をおこない、不動産の名義を被相続人の名義から相続人の名義に変えておく必要があります。既に亡くなっている被相続人から買主に直接所有権を移転することはできません。

遺言書がない場合、遺産分割協議が終わるまでの間、相続財産は相続人全員の共有財産となります。相続した不動産を売却する場合、共有者である相続人全員の同意が必要です。本事例では相続人同士の意思疎通が良好でしたが、相続人の人数が多い場合や互いに疎遠である場合などは、不動産の買い手が現れても、共有者である相続人全員の同意を得るのに時間がかかり、せっかくの売却のチャンスを逃してしまうこともあるため、注意が必要です。

なお、本事例のように相続財産を売却し、売却代金を相続人で分配する方法を換価分割といいます。不動産の換価分割をおこなう場合、相続登記においては、「相続人全員の名義で申請する」「代表相続人を1人選び、代表相続人の単独名義で申請する」という2つの方法が選択可能です。本事例では、相続人同士の仲が良く、スピーディーに売却手続きを進めたいという事情を考慮し、後者を選択されました。

解説者プロフィール

廣木 涼

司法書士事務所アベリア

司法書士

廣木 涼

大手司法書士法人で約5年の勤務、相続事業部のマネージャーを務め、独立。
不動産会社や保険会社など様々な業種と連携しながら、士業の枠に捉われず、多角的な視点から、遺言・家族信託等、生前の相続対策に関する総合的なコンサルティングサービスを提供しています。


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