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処分を決めた実家は「違法建築」だった!瑕疵責任が怖くて手放せない状況に

2023/4/3

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

下田 一寿(仮名)

大阪府在住。77歳。
数年前に父が亡くなり、3兄弟で実家を相続したものの、空き家状態で放置。末の弟が70代になったのを機に実家の処分を決意。

兄弟全員70歳以上に!年齢が実家の処分を決心させた

2021年、父の7回忌を執りおこないました。コロナ禍のため、ほかの親族は呼ばずに私たち兄弟のみ参列。法要後に食事をしながら近況報告する中で、長男である私が77歳、末の弟も70歳になったと知りました。「そうか、もう俺たち兄弟全員が70歳を超えたのか。歳をとったものだ」と、私は妙に感慨深くなると同時に、ずっと頭の片隅にあった実家の処分について「しなければいけない」という思いに駆られました。

実家は、父が亡くなって以来、登記変更もせずに空き家のまま放置。もしそのままにして私たち兄弟の誰かが亡くなると、その相続人である私たちの配偶者や子どもたちが登記変更などの手続きに関わらなくてはいけなくなります。家族の手を煩わせるのは本意ではなかったので「俺たちの年齢的に、そろそろ実家を処分しなくてはいけないな」と言うと、弟たちは少しの沈黙のあと「そうだな」と頷きました。

専門家に相談して判明したのは、実家の知られざる事実

私たちの実家は、大阪市此花区の駅から徒歩5分くらいの場所にあります。駅から少し離れると工場が多いエリアなのですが、住む場所として人気が高く駅周辺はマンションや一戸建てばかり。実家はそんな住宅街の中にありました。30坪程度の土地に建つ2階建ての戸建てで、築年数は60年以上。外壁や屋根は古めかしいのですが内装はリフォームしており、特にフローリングはとてもきれいなものでした。

実家の処分に向けて動き出すと決めたものの、さて何から手を付ければ良いものか。実家を離れて半世紀以上経つ私は、実家付近の不動産会社に詳しくありません。妻に相談すると「空き家の管理や活用に詳しい会社があるみたいよ」と教えてくれました。

さっそくその会社の担当者に実家を処分したい旨を伝えると、1週間後、建物の状態や登記など調査した結果を教えてくれました。そこにはなんと、私たちが知らない事実があったのです。

実家は2階建てなのですが、1階の一部分しか建物として登記されていませんでした。担当者曰く「最初の登記後に2階と1階の一部分を増築し、そのあと変更登記をしていない。しかも容積率がオーバーしているのでは」とのこと。兄弟みんなが記憶になかったので、きっと私たちがずいぶん幼い頃に増築したのでしょう。

不安を残さず売却したい!業者による買取りを選択

いわゆる違法建築であることがわかった私たちの実家。建物の一部が未登記のため中古住宅として売却するなら登記し直す必要があることを知りました。また、担当者曰く「違法建築の場合買い手は住宅ローンが組めず、買い手が現れても購入を検討しづらい状況」であることを伝えてくれました。ただ、住宅用地としては条件が良いので、解体して土地を売却するか、新しく建物を建てて売却するかが妥当という意見をくれたのです。

どうしたものかと頭を悩ませ、自身の実家を売却した経験を持つ妻に相談すると「問題のある家を一般の方に売却すると、後で何かあったときに責任を問われる可能性があるみたいよ」と教えてくれました。私たちにとって、よくわからないことで責任を求められるのはとても恐ろしいことでしたので、その気持ちを担当者に伝えると、個人ではなく業者に売却すれば販売価格は下がるけれど、そのような瑕疵担保責任の問題は起きないと教えてくれました。私たちは赤字にならなければ良いという考えだったので、今回相談に乗ってもらった不動産会社にそのまま買い取ってもらうことを決意。こうして私たちの実家は無事に処分することができたのでした。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

相続した不動産を売却しようと思ったら予期せぬ問題が発覚したというケースは、決して少なくありません。問題がある家は「売れないのではないか」と不安になることもあると思いますが、絶対に売れないとも限りませんので、まずは専門家に相談してみてください。相談した専門家の答えが納得いかなかったり不安を感じた場合には、セカンドオピニオンのように別の不動産会社に相談することもおすすめです。

本件のお宅は、一般販売が難しいというわけではなく、「現況有姿」として売主の瑕疵担保責任を問わない契約での売却も可能でした。しかし相談者の心理的なストレスを考えて、業者による買取りを一つの選択肢として提案したのです。売却する上で何を大切にするかで私たちのような不動産の専門家から提案できる方法も変わりますので、不動産売却の際は担当者に思いの丈をしっかり伝えましょう。

解説者プロフィール

株式会社フル・プラス

株式会社フル・プラス

大阪市内にて不動産業・建設業を営んでおり、土地活用や空き家の利活用についてのご提案を行っている企業です。 「所有者様には安心と未来設計を、使用者様には安全と快適をお届けする」という社是のもと、ご相談者様に寄り添った活用方法をご提案します。


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