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「税理士なら誰でも同じ」ではない!「相続税申告」をお願いした税理士がまさかの不慣れ

2023/6/6

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

菅野 幸子(仮名)

東京都在住。55歳。
母親が亡くなり相続税の申告をするべく、母親から紹介されていた税理士に頼むと、相続税の申告経験が少ないことが露呈。せまる申告期限の中、焦ることに。

生前の母が希望した税理士へ相続税の申告を依頼

母が亡くなったのは、2022年の6月。相続人は兄と私の2名。相続財産は自宅、賃貸アパート、銀行預金でしたが、銀行預金の額だけで 相続税基礎控除 の金額を上回っており、相続税がかかることは確実でした。相続税の申告期限を調べると「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」となっており、私たちの場合は2023年4月までが期日ということがわかりました。また、母は賃貸アパート経営による不動産所得があったため、 準確定申告 が必要。この期限は「相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」と相続税の申告期限より早いことがわかり、期日は2022年10月でした。

母は生前、「私が死んだら、後の手続きは、長年、確定申告を代行いただいてる税理士のAさんに任せておけば大丈夫だから」とよく話していました。Aさんは母の友人の弟で、実家の近所に個人事務所を構えています。兄と私は、Aさんに必要書類を提出の上、準確定申告と相続税申告の手続きをお願いし、10月までにまず準確定申告の手続を終えました。

露呈した税理士の経験値不足。申告期限のタイムリミットに焦る

「あとは相続税の申告ですね。年明けには目途がつくと思うので、またご連絡しますね」とAさん。私たちはすっかり安心していました。ところが、1月下旬になってもAさんからの連絡はなく、不安に思った私はAさんに電話をしてみました。すると「すみません。少し立て込んでいましたので、また近日中に」とのこと。

しかし、2月中旬になっても何の連絡もありません。申告期限まであと2ヶ月あまり。再度電話したところ、「実は思ったより難しくて。土地の評価額の計算など色々確認が必要で」と歯切れの悪い返答。「ウチは相続税の申告はめったにやらないので、仲間の税理士に聞きながら進めているんです。ただ、毎年今時分は確定申告期間の真っ最中で、税理士はみんな忙しいでしょ?落ち着いたら、また始めて何とか終わらせますから」というAさんの説明に大きな不安を抱き、「これはまずい」と焦りを覚えました。

改めて経験豊富な税理士に依頼。「同じ税理士でもここまで違うのか!」と驚愕

私たちは税理士の変更を思い立ち、兄の同僚が相続でお世話になったという税理士法人の事務所に足を運びました。

さっそく事情を説明し、「申告期限まで約2ヶ月。確定申告期間中ですが、お引き受けいただけますか?」と恐る恐る聞いてみると、「大丈夫です。私どもは、相続税申告は専門チームがございますので」と心強いお言葉。Aさんが口にしていた土地の評価についても「ご自宅の土地は、接道している出入り口が細長く、奥にまとまった敷地のある『旗竿地』で、きれいな正方形の土地と比べると、評価額が減額されます。具体的には…」と立て板に水。

聞けばこの税理士法人は、年間約700件の相続税申告を手掛けているそうで、Aさんとの経験値の差は歴然です。私たちは、その日のうちに正式に相続税の申告を依頼し、なんとか無事期限内に終えることができました。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

令和3年度の相続税の申告件数は、全国で約13万4千件(国税庁「令和3年分 相続税の申告事績の概要」)。一方、令和5年3月末日現在の税理士登録者数は、約8万人(日本税理士連合会)。頭割りした場合、税理士1人あたりの相続税申告業務の件数は、年間わずか1.7件程度と、すべての税理士が十分な経験を積まれているわけではありません。また、法人の税務会計や個人の所得税関連業務を中心に扱う税理士事務所の場合は、相続税の申告業務に携わった経験がない税理士も少なくありません。

相続税申告を依頼する税理士を探す際には、まずは相続税申告に対しての実績を確認されると良いでしょう。

相続税に詳しい税理士は、スピーディーに相続税申告業務を進められるだけでなく、税負担を軽減できるポイントも熟知しています。土地の評価方法やさまざまな特例の適用などに精通した税理士と、そうでない税理士との間では、計算する相続税額に大きな差が出る場合もあります。さらに、不慣れな税理士に任せた場合、申告後の税務調査で申告漏れを指摘されるリスクも高くなりますので、相続税の申告は、相続に詳しい税理士に依頼されることを強くおすすめします。

依頼した税理士の対応に疑問を感じた場合は、本事例のように軌道修正を図ることも重要です。

解説者プロフィール

足立 賢亮

税理士法人アイユーコンサルティング

東京事務所 マネージャー 税理士

足立 賢亮

国内大手税理士法人から2019年に入社。入社後の相続税申告は300件に及ぶ。相続対策、法人顧問、個人顧問、組織再編を伴う資本政策等、幅広い業務に対応しており、丁寧かつスピーディーな仕事振りでお客様とのコミュニケーションを得意とする。


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