イエツム

相続のこと、もっとわかりやすく。
もっとスムーズに。

相続対策における生命保険の活用方法

2023/1/31

シェアする
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

生命保険は、「遺産分割トラブル防止」「相続税対策」という2つの観点から、相続対策に有効です。今回は、相続対策における生命保険の活用方法について考えていきたいと思います。

相続対策を目的として活用される生命保険は?

生命保険には様々なタイプがありますが、どんな生命保険でも相続対策に有効というわけではありません。相続対策を目的として主に活用される生命保険は、「一時払い終身保険」というタイプの保険です。保険料を毎月支払うのではなく、契約時に一括で支払うのが特徴で、被相続人を契約者兼被保険者、相続人を受取人として契約します。

遺産分割トラブル防止のための活用

生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産となり、民法上、 遺産分割協議 の対象となる相続財産とは区別されます。特定の相続人に多めに財産を遺したい場合、その相続人を保険金受取人に指定しておくことで、遺言を作成することなく、確実にお金を遺すことが可能です。

相続人の間で被相続人の介護の貢献度に差がある場合、貢献度の高い相続人の 寄与分 (被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人がいる場合、その相続人の 法定相続分 に寄与した分を上乗せできる制度)を主張できますが、実際に認められることは、なかなかありません。結果として、遺産分割トラブルに発展するケースが数多くあります。貢献度の高い相続人を保険金受取人とする生命保険に加入しておくことで、その相続人の貢献に報いることができますし、トラブルに備えることも可能となります。

 また、 代償分割 を考える場合も生命保険の活用が有効です。代償分割は、特定の相続人が不動産などの現物財産を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払って調整する遺産分割の方法です。

たとえば、

・母が亡くなった場合の相続人は長男(母と同居)と次男の二人
・遺産総額の中で母の自宅が占める割合が大きい

といった場合について考えてみましょう。

「長男は自宅を相続し、母の死後も自宅に住み続けたい。しかし、長男と次男による平等な相続を実現したい」というケースでは、自宅を相続した長男から次男に代償金を支払うことになります。次男が相続する自宅以外の財産額と、遺産総額の1/2相当額との差額を、代償金の支払いにより調整するのです。

しかし、そのためには、長男に一定の資金力があることが前提となります。そこで、母が元気なうちに母自身を契約者兼被保険者、長男を保険金受取人とする生命保険に加入しておきます。母の死後、死亡保険金を受け取った長男は、これを活用してスムーズに次男に代償金を支払うことが可能となります。

相続税対策のための活用

民法上、 遺産分割協議 の対象となる相続財産とは区別される生命保険の死亡保険金ですが、税法上は「みなし相続財産」に該当し、 相続税 の課税対象となります。ただ、生命保険の死亡保険金には、「遺族の生活を保障する」という本来の意義があるため、被相続人を契約者兼被保険者、相続人を保険金受取人として契約する生命保険の死亡保険金については、

500万円×法定相続人の数(相続放棄をした人がいても、その相続放棄がなかったものとしてカウント)

で算出される相続税の「非課税枠」が認められています。

たとえば、相続人が 配偶者 と長男、次男の3人だった場合、1,500万円(=500万円×3人)までが相続税の課税対象外となります。この非課税枠は、相続人全員が受け取った死亡保険金の合計額について適用さるため、配偶者1人が1,500万円受け取った場合でも、配偶者と長男、次男の3人が500万円ずつ受け取った場合でも、全額が課税対象外となります。

財産を現金として遺した場合、その全額が相続税の課税対象となりますが、死亡保険金として遺すことで、一定額まで相続税の課税対象外とすることができるため、相続税対策を考える人の多くが、生命保険を活用しています。

親が高齢でも生命保険に加入できる?

「生命保険が相続対策に有効であることはわかったけれど、うちの親は高齢なので、生命保険に新たに加入するのは難しいのでは・・・?」とあきらめかけている人もいるかも知れません。しかし、相続対策に活用される一時払い終身保険の加入年齢の上限は、85歳、90歳など、かなり高めに設定されており、親御さんが高齢の場合でも、十分活用できる余地があります。活用可能な生命保険にはどのようなものがあるか、信頼できるファイナンシャルプランナーなどに相談してみると良いでしょう。

執筆

執筆

 

一般社団法人シニアライフよろず相談室

一般社団法人シニアライフよろず相談室は、信頼できる提携の専門家・企業とのネットワークを活かし、相続・終活など、シニアのさまざまなお悩みをワンストップで解決できる相談窓口を運営しています。毎週金曜日、夕刊フジにコラム「シニアライフよろず相談室」を連載中。