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相続登記をしないことによるリスク・デメリット

2022/10/7

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相続では、被相続人が残した遺産の中に自宅などの不動産が含まれていることは珍しくありません。

土地や建物などの不動産を相続した際、本来は不動産の名義を、相続した人の名義に変更する必要があります。これを「相続登記」と言いますが、不動産を相続したにもかかわらず、元の所有者名義のまま変更せず放置してしまっているケースが多いのが現状です。

しかし、相続登記をしないことで、さまざまなリスクが発生することをご存知でしょうか。ここでは、相続登記をしないリスクやデメリットから相続登記のやり方までを解説していきます。

相続登記とは?

相続登記とは、身内が亡くなり不動産を相続した際に、被相続人名義から相続した人へと名義変更することを指します。

そもそも不動産の登記は、全国の土地や建物が誰の所有物なのかを、法務局が管理する登記簿に記録する制度です。登記簿に記載があることによって初めて、その不動産の権利を主張できるという重要な手続きです。相続によって所有者が変われば、当然その旨を手続きし、誰の所有物であるのかをはっきりさせておく必要があります。

にもかかわらず相続登記をしない人が多いのは、現行の法制度では相続登記が義務ではなかったことが大きく影響しています。

法改正で義務化

これまで義務ではなかった相続登記ですが、法改正により令和6年4月1日より義務化されます。

その背景には、「所有者不明土地」の社会問題があります。相続登記されないまま何代にもわたり放置された土地が、所有者がわからず、不動産の売買も処分もできずに地域開発などの妨げになっているのです。日本の所有者不明土地の総面積は、2040年には北海道に迫る規模になるとも言われ、これを解決するために法改正に踏み切ったのです。

法改正で変更される点は、

・不動産を取得した相続人は、相続により所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記すること
・正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があること

以上2点について、義務化に伴い期限と罰則が新たに設けられました。

さらに相続登記の義務化は、施行日前の相続についても適用されるので注意が必要です。

相続登記を放置することのリスクとデメリット

今回、法改正によって義務化される相続登記ですが、たとえ義務でなかったとしても相続登記はしておくべきです。なぜなら、相続登記をしないことで下記のようなリスクやデメリットがあるからです。

売却できない

不動産を相続しても、相続登記をしなければ売却はできません。不動産の売却は所有者しかおこなうことはできず、所有者である証明が登記によってなされるため、登記を行わず亡くなった人の名義が残ったままでは相続を受けても売却ができなくなってしまいます。相続人がきちんと登記を済ませ、所有者が変更したことを証明できるようにしましょう。

担保にできない

相続した不動産を担保にして金融機関から融資を受けたい場合、不動産の名義が亡くなった人のままではその不動産を担保とすることができませんので、融資を受けることもできません。

権利関係が複雑になってしまう

相続発生時にその都度登記変更をきちんとおこなっていなければ、代々受け継ぐうちに相続人がどんどん増えていってしまい、権利関係が複雑になってしまいます。

例えば、母親が亡くなり、兄と弟の2人が相続人として母親名義の不動産を相続し、相続登記をしないまま、今度は兄が亡くなったとします。兄には妻と3人の子どもがいた場合には、弟と兄の妻、そして兄の子ども3人、合計5人がその不動産の共有者となります。

このような場合には、母親が亡くなった時点にさかのぼり 遺産分割協議 をやり直す必要が生じるほか、共有者が増えたことによって協議が煩雑になっていきます。さらに、このときにも相続登記をせずに放置して、次の代の相続が発生したらどうなるでしょうか。所有者の誰かがこの不動産を処分したくとも、顔も知らないような遠い親戚と協議しなければならず、揉め事に発展する可能性も高くなるでしょう。

相続財産を差し押さえられる可能性がある

相続人の中に、借金があり支払いが滞っている人がいる場合、債権者に不動産の相続持分を差し押さえられてしまう可能性があります。不動産は遺産分割協議が終わるまで相続人による共有状態にあるため、債権者は借金がある相続人の法定相続分のみを 代位 申請によって相続登記して差し押さえることができます。

差し押さえが適用されると、借金がある相続人の返済が完了しない限り、その不動産の名義を他人に変更することができません。

上記のようなデメリットやリスクを回避するためにも相続登記をきちんと済ませるようにしましょう。

相続登記の流れ

相続登記は、次のような手順でおこないます。

1.相続する不動産を確認する
2.遺言または遺産分割協議で取得する人を決める
3.相続登記に必要な書類を収集、作成する
4.管轄の法務局へ申請する

被相続人が 遺言 を残していれば、原則として遺言どおりに財産を分けます。一方で相続人全員で話し合う「遺産分割協議」にて遺産の分配を決めた場合は、誰が不動産を相続するのかを記載した遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の作成が終わったら、次の書類を準備して相続登記を申請します。

  • 登記申請書
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 遺言か遺産分割協議書
  • 被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本、住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

相続登記は複雑な条件でなければ相続人自らおこなうことも可能です。しかし、書類の収集などの手間や知識も必要となるので、簡単ではありません。専門家に依頼して進めることも一つの方法なので、検討してみましょう。

まとめ

不動産は相続で揉める原因になりやすい財産ですが、適切な形で相続登記をおこなうことでトラブルが起こるリスクを減らすことができます。

次世代に問題を繰り越さないためにも、相続登記をおこなっていない人はなるべく早く対応するようにしましょう。

監修

監修

 

司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。