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遺言書の種類とメリット

2022/10/12

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身内の誰かが亡くなると相続が発生します。そのとき相続人が1人であればトラブルになることはありませんが、2人以上になった場合には、遺言書の有無によって相続の進め方が大きく変わってきます。

ここでは、遺言書があることのメリット、2種類ある遺言書の特徴などについて解説します。

遺言書のメリット

遺言書 があることによる利点は、次の三つです。

①故人の意思を反映できる
②相続におけるトラブルを回避できる
③相続手続きの負担が軽減できる

故人の意思を反映できる

遺言書によって故人の意思で遺産分割を指示し、相続を進めることができます。故人にとって、残された家族や関係の深かった人などに自分の意思や思いを伝えられるというメリットがあります。遺言書では、相続人以外の第三者を遺産の受取人に指定することもできます。

相続におけるトラブルを回避できる

遺言書がない場合は相続人全員による 遺産分割協議 をおこなって相続することになります。普段、仲のいい兄弟姉妹でもそれぞれに家庭ができれば、利害関係によって意見が対立し、協議がまとまらない「争族」となるケースも少なくありません。

また、 法定相続人 同士の関係が遠い(良くない)場合、協議をすること自体が遺族の大きなストレスになります。遺言書があれば遺言書の内容に従って遺産分割をするのが原則となるため、円滑に相続を進めることができます。

相続手続きの負担が軽減できる

遺言書に 財産目録 が付帯されている場合は、すべての相続財産が明らかとなります。遺言書と財産目録がなければ、相続財産を把握するための調査、それに続く遺産分割協議、遺産分割協議書の作成が必要となります。遺言書があればこうした相続手続きが大幅に軽減されることになります。また、 遺言執行者 を指定しておけば、遺言執行者以外の相続人の作業はかなり軽減されます。

遺言書の種類

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類あります。それぞれに特徴があるため、順に説明していきます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、字のとおり自筆で書かれた遺言書です。決められた形式にしたがって自筆で記されている必要があるため、不備などがあると遺言書が無効になる可能性があります(付帯する財産目録は自筆でなくても問題ありません)。

自筆証書遺言は、基本的に遺言者が自分で保管することになるために、紛失してしまったり、保管場所を誰にも伝えていなかったことで発見されなかったりするリスクがありました。しかし、2020年7月に自筆証書遺言を法務局が預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」が開始されたことで、自筆証書遺言でも確実に遺言書の存在を遺族に伝えられるようになりました。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で証人2人以上が立会いのもと、遺言者が公証人に口頭で伝えた遺言内容を公証人がまとめる遺言書です。

公証人がまとめてくれるため、形式的な不備によって遺言書が無効になるリスクはなくなりますが、作成してもらう際に手数料が発生します。手数料は、財産を受け取る人ごとに下記の表に応じた金額がかかります。また、すべての財産の総額が1億円以下の場合は、遺言加算として11,000円が加算されます。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円(1億円を基準として超過額5,000万円ごとに13,000円を加算)
3億円を超え10億円以下95,000円(3億円を基準として超過額5,000万円ごとに11,000円を加算)
10億円以上249,000円(10億円を基準に超過額5,000万円ごとに8,000円を加算)

例えば、配偶者に3,000万円、子ども1人に1,500万円を相続するという内容の公正証書遺言を作成する場合の手数料は下記のようになります。

配偶者分+子ども1人分+総額1億円未満の遺言加算分=29,000円+23,000円+11,000円=63,000円

もう一つ例を挙げると、配偶者に1億5,000万円、長男に1億2,000万円、次男に8,000万円を相続するという内容の公正証書遺言を作成する場合の手数料は下記のようになります。

配偶者分+長男分+次男分=56,000円+43,000円+43,000円=142,000円

その他にも証人を専門家にお願いする場合や公正証書遺言を書き直す際にも費用が発生します。また、公正証書遺言は公証役場に行かなくても公証人に出張してもらって作成することも可能ですが、手数料が1.5倍になる上、公証人の交通費、日当も払う必要があります。

自筆証書遺言書の検認

遺言書の 検認 とは、遺言書の保管者、または発見した相続人が、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出し、相続人の立ち会いのもと、遺言書の内容を確認する手続きです。

封がされた遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会いの上、開封しなければいけません。誤って開封してしまうと5万円以下の過料に処せられる可能性があります。

ただし、公正証書遺言および法務局で保管されている自筆証書遺言については、検認は不要です。

検認の目的は、相続人に対して遺言の存在と内容を周知し、遺言書の偽造・変造を防止するためであって、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

検認の手続きは、以下のように進みます。

①通知・検認の出席

遺言書の保管者や発見した相続人による検認の申立てがあると、相続人に対し、裁判所から検認期日(検認をおこなう日)の通知をします。申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは、各人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続きはおこなわれます(申立人は、遺言書、申立人の印鑑を持参します)。

②裁判官の検認

検認期日に出席した相続人などの立ち会いのもと、封がされた遺言書は開封の上、裁判官が遺言書を検認します。

③検認済証明書の申請

遺言書の内容に基づいて相続手続きを進める際には遺言書と検認済証明書がセットで必要になるため、検認終了後、証明書の申請(遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要)をします。

まとめ

遺言書がないことから故人の意思や思いを確認できず、相続人同士の意見の相違にて、揉め事に発展してしまうことも珍しくありません。

遺言書はスムーズな相続を実現するためにとても重要なものです。遺言書の存在一つでトラブルを避けられる可能性もあるので、親の立場であっても、子どもの立場であっても、家族のことを考え、遺言を遺すようにしましょう。

監修

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司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。