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法定相続分とは|相続割合と最低限の保証割合となる遺留分

2022/10/3

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相続が発生した際に一番気になる点は、「誰がいくら相続するか」という点ではないでしょうか。そして、相続トラブルに発展する一番の要因は、遺産をどのように分けるかで相続人同士の意見がぶつかってしまうことです。

しかし、このような相続トラブルにならないように国は民法で相続時の遺産の分け方について目安を設けています。それが「法定相続分」です。

今回は、「法定相続分」の基本的な割合と遺産分割する上で必ず知っておくべき「遺留分」についてご紹介します。

法定相続分とは?

遺言書 がある場合には、 被相続人 の意思が優先され、基本的には遺言のとおりに財産を分けることになります。

しかし、遺言書がない場合や、遺言書があっても遺産分割に関する指定がない場合には、相続人全員で 遺産分割協議 をおこない、すべての相続人の合意のもと、遺産の分割がなされなければいけません。

その遺産の分割に際し、目安がないとすべての相続人が合意するのは難しいため、国が目安として定めたのが「法定相続分」です。

法定相続人の組み合わせで変わる割合

法定相続分は、配偶者の有無や 法定相続人 の順位によって下記の表のように割合が変わります。配偶者以外の法定相続人が複数人いる場合については、それぞれの相続分を人数で均等に割ります。

法定相続人法定相続分法定相続人法定相続分
第1順位配偶者1/2子ども(養子、胎児を含む)1/2 ※1
第2順位配偶者2/3父母(養父母を含む)、祖父母1/3 ※2
第3順位配偶者3/4兄弟姉妹1/4 ※3

※1 子どもの数で均等割
※2 父母の数で均等割
※3 兄弟姉妹の数で均等割
※上記の血族がいない場合は、配偶者がすべて相続する

例えば、法定相続人が配偶者と子ども3人の場合には、下記のようになります。

配偶者:2分の1
子ども3人:それぞれ6分の1ずつ

法定相続人が配偶者と父母2人の場合には、下記のようになります。

配偶者:3分の2
父母2人:それぞれ6分の1ずつ

法定相続人が配偶者と兄弟姉妹2人の場合には、下記のようになります。

配偶者:4分の3
兄弟姉妹2人:それぞれ8分の1ずつ

法定相続人に配偶者がいない場合は、以下の表のとおりとなります。

法定相続人法定相続分
第1順位子ども(養子、胎児を含む)すべて ※1
第2順位父母(養父母を含む)、祖父母すべて ※2
第3順位兄弟姉妹すべて ※3

※1 子どもの数で均等割
※2 父母の数で均等割
※3 兄弟姉妹の数で均等割
※上記の血族がいない場合は、相続人なし

例えば、配偶者がいなくて、法定相続人が子ども4人のみの場合は、下記のようになります。

子ども4人:子どもそれぞれ4分の1ずつ

法定相続人が1人しかいない場合は、その相続人の優先順位に関係なく、すべての財産を1人が相続します。

法定相続分はあくまでも目安

民法で定められているとはいえ、法定相続分はあくまでも目安です。実際の相続における遺産分割協議では、法定相続分のとおりでなくても相続人全員の合意があれば、協議で決めた割合で相続することができます。

生前贈与があった場合

生前に多額の金銭や財産の贈与などを受けた場合は、相続の前渡し(生前贈与)があったものとみなされ、相続分から引かれて計算することになります。

例えば、法定相続人が子ども2人のみで遺産が2,000万円あり、遺産分割協議にて、法定相続分で遺産分割をすることで合意した場合、それぞれ2分の1となる1,000万円ずつを相続することになります。

しかし、そのとき子どもAだけが生前に500万円の贈与を受けていたとしたら、遺産は2,500万円として計算され、子どもAは750万円(2,500万円×2分の1−500万円)、子どもBは1,250万円(2,500万円×2分の1)を相続することになります。

相続人の誰かが介護をしていた場合

相続人の1人が、被相続人の看病や介護をしたなどの貢献があった場合には、貢献に見合う分を「寄与分」として、ほかの相続人よりも多くの相続分を主張することができます。寄与分がある場合は、その寄与分を差し引いた金額を遺産として、相続人で分けることになります。

しかし、寄与分はほかの相続人の同意を得ることが前提となります。寄与分の算出には明確な証拠や資料が必要となり、相続人同士の話し合いで収拾がつかなくなった場合は専門家などの第三者の仲介が必要になることもあるでしょう。

法定相続人の最低限の権利「遺留分」

遺言書に、「すべての財産を友人である◯◯に相続させる」など法定相続人ではない第三者に財産を相続させる、あるいは特定の相続人に極端に多くの財産を配分する、などの記載があった場合、法定相続人でありながらも財産をほとんど受け取ることができない事態の発生が懸念されます。

こうした遺言書によって、残された遺族が住んでいる家を失い、日々の生活にも困るといった事態に陥らないように、民法では相続人に一定割合を最低限保証する「遺留分」を定めています。相続人の遺留分はおおむね下記の表のとおりです。なお、第3順位である兄弟姉妹に遺留分は認められていません。

法定相続人配偶者子ども父母遺留分の合計
配偶者のみ1/21/2
子どものみ1/2 ※11/2
配偶者と子ども1/41/41/2
父母のみ1/3 ※21/3
配偶者と父母1/31/61/2

※1 子どもの数で均等割
※2 父母の数で均等割

相続が発生した際には、遺言の内容が遺留分を侵害していないかを確認することも大切です。

民法が改正されたとはいえ、いまだ長男がすべての遺産を相続するという“家督相続”の風習や価値観が残る家系や地域もあります。その風習が一概に悪いとはいえませんが、腑に落ちない相続人もいるでしょう。

すべての財産を1人の相続人が相続したことによって、遺留分が侵害されたとわかれば、書面にて財産の取戻しを相手に請求できます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

この遺留分侵害額請求の権利は、相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内と期限があるため、自分で手続きするのが難しいと感じたら、すぐに専門家に相談することが得策といえます。

まとめ

法定相続分」はあくまでも分割の目安であって、遺産分割協議において相続人全員の合意があれば、相続の分割割合は自由に決めることができます。

また、遺言によって法定相続人の取り分が極端に少なくなった場合を保証する遺留分という権利があることを知らなければ、その権利を主張することはできません。法定相続分と遺留分はセットで知識として心得ておくことが肝要といえます。

(この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています)

監修

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司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。