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遺言執行者とは|選任するメリットと選任方法

2022/9/29

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相続が発生すると、トラブルなくスムーズに相続手続きを完了できるかは、相続人にとって気になる問題でしょう。

カギとなるのは、まず遺言書があるかどうかです。遺言書が残されていれば、基本的には遺言に書かれた内容に従って相続が進むため、遺産の分配で相続人同士のトラブルは起こりにくく、相続を進めやすくなります。

そして、もう一つ相続手続きをスムーズに進めるために重要な存在が、「遺言執行者」です。この記事では、相続手続きを進める上で遺言執行者はどのような役割を果たすのか、誰がなるのか、詳しい作業内容について解説していきます。

遺言執行者とは?

遺言執行者」は、遺言書のとおりに相続を実行するために必要な手続きをおこなう人のことです。

遺言執行者が選任されていない場合は、相続人全員で協議の上、相続手続きを進めていくことになります。

相続手続きの中には、

  • 相続財産の調査
  • 相続人の範囲の確定
  • 相続財産目録の作成
  • 相続財産の分配

といったものが含まれます。

これらの手続きを相続人の間で協議しながらおこなっていくには、かなりの時間と労力が必要になります。しかし、遺言執行者が選任されていると、遺言執行者単独で責任をもって手続きを進めることができるため、スムーズな遺言実行が可能になります。

遺言執行者は、相続財産の調査、各金融機関の預金解約など、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をおこなうことができます。

遺言執行者には誰がなるの?

未成年者と破産者以外であれば誰でも遺言執行者になることができますが、自分でなろうとしてなれるものではなく、選ばれた人が遺言執行者になります。選ばれるケースは主に以下の三つがあります。

  • 遺言書で指定される
  • 第三者に指定される
  • 家庭裁判所に選任される

それぞれ詳しく見ていきましょう。

遺言書で指定される

被相続人が、遺言書内で遺言執行者を指定する方法です。

相続人の誰かを指定していることもあれば、相続関連に詳しい専門家を指定していることもあります。また、指定していた遺言執行者が死亡する、認知症を患うなど、遺言執行者としての役割を果たせなくなるケースを想定して、複数人の遺言執行者を指定する場合もあります。

第三者に指定される

遺言書で具体的な人が指定されているのではなく、「◯◯が遺言執行者を決めてください」などと書かれ、相続発生時に相続人以外の第三者に遺言執行者を決めてもらう方法です。

被相続人が遺言執行者として誰を選ぶべきか決められない場合に、この方法を採られることがあります。「◯◯」に当たる第三者には、被相続人が相続対策や 遺言書 作成の相談などをしていた専門家の名前が入るケースがよく見られます。

家庭裁判所に選任される

遺言書に遺言執行者の記載がない場合や、選任された者がなにかしらの要因で遺言執行者に就任できない場合があります。そのようなときは、相続人や利害関係者などが家庭裁判所に申立てをし、遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者に選ばれたら?

遺言書で相続人の誰かを遺言執行者として選任するケースも多いですが、専門家ではない自分が遺言執行者に選ばれても「きちんと相続手続きができるだろうか」と不安になる方もいるのではないでしょうか。

実は、遺言執行者に選ばれたとしても就任するかどうかは自分で決めることができます。どうしても時間がない、責任が持てないなどの理由がある場合には、辞退することを検討するのも一つの方法です。遺言執行者が辞退すると、基本的には相続人全員で協力して相続を進めることになります。

注意が必要なのは、「辞退」と「辞任」は違うという点です。一度、遺言執行者に就任した後に辞任をする場合は、家庭裁判所の許可が必要になり、正当な理由を求められます。

また、遺言執行者は就任後に第三者に作業を委託することもできます。しかし、委託された第三者が相続手続きをおこなう際に損害が生じた場合には、委託した遺言執行者が責任を負うことになります。

委託する際には、上記の点(リスク)も踏まえ、過去の経験や実績等を必ず確認し、手続きをスムーズにおこなってもらえる専門家を検討しましょう。依頼先としては、司法書士、弁護士、税理士などがあります。

遺言執行者になったら何をするの?

遺言執行者に選任されたら、相続手続きの進行役として以下の手続き等をおこないます。

➀遺言執行人就任の通知

遺言執行人となることを承諾したら「遺言執行人就任通知」を作成し、判明している相続人全員に通知します。通知の際には、就任の事実だけでなく遺言書のコピーを添付するなどして「遺言書の内容」を相続人に知らせます。

②相続財産の調査

通知が終わったら、被相続人の財産をすべて調査します。
この調査には相続財産の内容を調べることが含まれます。

相続財産の対象となるのは、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナス財産まで含まれるので注意が必要です。

③相続人の範囲の確定

次に、相続人の範囲を確定します。相続人の範囲の確定とは、誰が相続人となるのか特定する作業です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、調べます。

④財産目録の作成・交付

相続財産の調査が終わり、相続人の範囲が確定したところで 財産目録 の作成と交付をおこないます。財産目録とは、相続財産の内容が一覧で把握できるように纏めたもので、相続財産の調査で調べた、プラスの資産とマイナスの資産を記載していきます。

⑤遺言内容の実行

遺言内容を実行するために、下記の手続きをおこなっていきます。

預貯金口座解約
戸籍謄本などの必要書類が揃ったら、預貯金口座の解約手続きをおこないます。定期預金の場合は、名義を相続人に変更して満期まで継続させることもできる金融機関もありますが、具体的な手続き等は事前に金融機関に確認しましょう。

相続登記
相続財産に土地や建物がある場合、相続した人の名義に変更する必要があります。登記申請を自分でおこなうことが難しい場合は、司法書士に依頼することもできます。

その他業務
他にも、株式や自動車の名義変更などにも対応します。

⑥業務の終了報告

すべての業務が終了した後は、相続人全員に「遺言執行完了通知」で終了報告をおこないます。これで、遺言執行者としての役割は完了です。

まとめ

遺言執行者には未成年者と破産者以外であれば、基本的には誰でもなることできます。

しかし、さまざまな手続きを遂行するためには時間も知識も必要となるため、仮に相続人の誰か1人が指名されたとしても、仕事で忙しかったり、相続の知識に乏しかったりすると役割を果たすことが難しい場合もあります。

専門家に任せたほうがスムーズに相続が進むこともあるため、自身も含めて相続人の誰かが指名されていた場合は、専門家に相談することをおすすめします。

(この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています)

監修

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司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。