イエツム

相続のこと、もっとわかりやすく。
もっとスムーズに。

遺産分割協議とは|協議内容と注意点

2022/9/23

シェアする
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

遺産の分け方を決めるために相続人同士が話し合うことを「遺産分割協議」といいます。

有効な遺言書があれば遺言に従って相続することになりますが、遺言書がなければ相続人同士による話し合いを通じて、「相続人全員による合意」を目指すことになります。

遺産分割協議とは?

前述にあるように、相続が発生し、残された遺産を相続人がどう分割して相続するかを話し合うのが「遺産分割協議」であり、相続人全員が合意した内容を記載したものが「遺産分割協議書」です。

相続の手続きにおいて、遺産分割協議が必要となるのは、次の場合です。

遺言書がなく、相続人が複数いる
相続登記・相続税申告等の手続きが必要
後々のトラブル発生を避けたい

逆に相続人が一人しかいない、 遺言書 の内容に沿って遺産分割する場合は、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議をおこなうのに期限はありませんが、 相続税 が発生する可能性がある場合はその申告までに全員の合意がえられないと、配偶者の税額軽減などの特例が受けられないこともあるので、注意が必要です。

遺産分割協議の流れ

相続の発生から遺産分割協議書作成までの基本的な流れは以下のようになります。

法定相続人を確認する

法定相続人 となるのは、被相続人の配偶者と血族に限られており、被相続人の配偶者は必ず相続人となります。配偶者以外の相続人については、相続の優先順位を3つの段階、つまり「第1順位」、「第2順位」、「第3順位」を、民法で定めています。

第1順位=子ども、子どもがいない場合は孫、子どもと孫がいない場合はひ孫
第2順位=父母、父母がいない場合は祖父母
第3順位=兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合は甥・姪

第1順位の該当者がいない場合には第2順位に、第2順位がいない場合には第3順位に、相続人の順位は移ります。

法定相続分を確認する

誰がどのくらい相続するべきかは民法にて示されており、これを「法定相続分」といいます。相続分は、配偶者の有無によって大きく変わります。配偶者がいない場合、基本的には相続人の数で均等割りとなります。

法定相続分はあくまでも相続割合の目安にすぎませんので、被相続人が遺言書を残していなければ、法定相続人は遺産分割協議を通じて割合を自由に決めることができます。

法定相続人法定相続分法定相続人法定相続分
第1順位配偶者1/2子ども(養子、胎児を含む)、
代襲相続
1/2
第2順位配偶者2/3父母(養父母を含む)、
祖父母
1/3
第3順位配偶者3/4兄弟姉妹、
代襲相続
1/4

相続財産を確定し、財産目録を作成する

被相続人が生前に所有していたすべての財産を確定させます。土地・家屋などの不動産、預貯金、株式や債券、貸付金などプラスの財産だけでなく借入金、未払金などのマイナスの財産も含まれることに注意しましょう。また、誰かの保証人になっているかも確認しましょう。

相続財産が確定したら、すべてを一覧表にした財産目録を作成します。相続財産の価額は、相続開始時の「時価」で評価します。

遺産分割協議をおこなって、遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議をおこなう上では、相続人の全員が一堂に集まることが望ましいですが、遠方だったり、病気を患っていたりなどで参加ができなければ、手紙やメールでの協議も可能です。協議を通じて相続人全員の合意が得られれば、その内容を遺産分割協議書にまとめ、全員の署名と実印を押印します。

遺産分割協議後の注意点

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合

遺産分割協議書の作成後に、遺品などを整理していたら遺言書が見つかったということもあります。

基本的には、被相続人の意思を反映した遺言書が優先されるため、遺産分割協議は無効となり、遺産分割のやり直しが原則となります。

ただし、遺言によって相続人以外の第三者に対する遺贈がなく、相続人全員と 遺言執行者 が遺産分割協議の優先に合意すれば遺言書に従わないことも選択できます。遺言書が見つかったことによってより多くの遺産を得られる可能性がある相続人が当初の遺産分割に異を唱えるなど、誰か1人でも遺産分割協議の優先に合意しない場合は、原則どおり遺産分割のやり直しとなります。

他にも、遺言書で遺言執行者が選任されていた場合、同じく遺言書で相続人の排除があった場合、あるいは一部の相続人が遺言書を隠匿していた場合などは、やり直しとなります。

このような理由で遺産分割協議のやり直しをしないためにも、遺言書の存在は事前に確認しておくことが重要です。

新たな遺産が見つかった場合

遺産分割協議をおこなったときには把握していなかった新たな遺産が見つかった場合、基本的には当初の遺産分割協議は有効となるものの、新たに見つかった遺産についてのみ遺産分割協議をおこなうのが一般的です。

しかし場合によっては遺産分割協議自体がやり直しになることもあります。その理由として典型的なのは、発見された遺産が高額で、遺産総額に占める割合が大きい場合、相続人が新たに見つかった遺産を隠していた場合などです。

特に問題となりやすいのは、遺産分割協議後に多額の債務(借金)が見つかった場合です。遺産分割協議は自らを相続人と認める行為であるため、遺産分割協議をおこなってしまった後では、本来なら 相続放棄 をしていたであろう多額の債務が見つかっても相続放棄や 限定承認 が認められない可能性があります。

そのようなことが起こらないように、すべての相続財産をしっかり確認しておくことが大事です。

まとめ

遺産分割協議のやり方や、遺産分割協議書の作り方に決まったルールはありません。

しかし、いわゆる争続はこの遺産分割協議のときに起こるケースがほとんどです。最悪の場合、裁判所での調停に持ち込まれ、相続が一向に終わらないということもあり得ます。そうならないためにも、相続人間での日ごろからのコミュニケーションが大切です。

なかなか協議がまとまらない場合は早めに専門家に相談をしてみることをおすすめします。

(この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています)

監修

監修

 

司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。