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遺品整理をおこなう上で気を付けるべきこと

2023/4/24

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相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するため、被相続人の遺品の所有権は相続人が承継します。このため、被相続人の遺品整理は、原則、相続人がおこなうことになります。今回は、遺品整理をおこなう上での留意点をまとめました。

遺品の仕分けを通して相続財産の全容を把握することを意識する

遺産分割協議相続税 の納税を円滑におこなうためには、相続財産の内容を正確に把握する必要があります。被相続人の生前に、相続人との間で財産の内容について、情報共有がなされていない場合、遺品の中から手がかりを見つけ、相続財産の全容を把握していく必要があります。

遺品整理をおこなう場合、まずは、全ての遺品を以下の4つのカテゴリーに分類する「遺品の仕分け」から着手すると良いでしょう。

(1)相続財産の手がかりとなる重要書類等

預金通帳やキャッシュカード、証券会社から定期的に送られてくる取引残高報告書、不動産の権利証(登記済証または登記識別情報)などは、相続財産の内容を正確に把握する上での重要な手がかりとなります。見つけたら大切に保管しましょう。

(2)金銭的価値のある遺品

宝石や貴金属などは仕分けた上で、どのくらいの価値があるのか評価額を調べます。これらの評価額を把握する方法としては、「購入した店に問い合わせる」「専門家に査定してもらう」などの方法があります。価値のわからない美術品や骨董品がある場合は、古美術商などに査定を依頼してみると良いでしょう。

(3)残しておきたい思い出の品

遺品の中には、金銭的な価値はないけれど残しておきたいものもあります。写真や被相続人の日記、愛用品などがこれに該当します。「形見分け」の対象となるものですが、遺産分割前における遺品はあくまでも相続人全員の共有財産ですので、相続人全員の合意を得てからおこなうようにしましょう。

(4)それ以外の不用品

上記(1)~(3)に該当しないものは、不用品として、廃棄処分の対象となります。

相続放棄、限定承認をする可能性がある場合の留意点

相続人は、被相続人が亡くなり、自分が相続人であることを知った時から原則3ヶ月以内の「熟慮期間」に、「単純承認」「相続放棄」「限定承認」のいずれかを選択する必要があります。熟慮期間においては、相続財産の全容をしっかり把握した上で、文字通り熟慮して、相続についての方針を決める必要があります。

遺品の中から、借用書、滞納している税金や家賃の督促状、消費者金融のレシートといった「マイナスの財産」の手がかりが見つかる場合もありますが、「マイナスの財産」の金額が大きい場合は、相続放棄や限定承認を検討することになります。

相続についての方針を決める前に遺品を処分してしまうと、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす(民法921条)」という規定により、相続放棄や限定承認ができなくなってしまう可能性があります。相続財産の全容が把握できていないうちは、遺品の売却・換金はもちろん、形見分けや不用品の廃棄処分などもおこなわないようにしましょう。

遺品整理業者に依頼する際のポイント

遺品の量が多い場合や忙しくて対応するのが難しい場合などは、遺品整理業者に依頼するのも1つの選択肢です。

遺品整理の料金は、
①作業量に比例する作業コスト
②廃棄処分にかかるコスト
の2要素から構成されます。ホームページやパンフレットに掲載されている「1LDK 〇〇円~」といった間取りに応じた料金の目安は、あくまでも目安でしかありません。実際の料金は、遺品の量はもちろん、エレベーターや駐車スペースの有無といった作業環境によって大きく変わってきます。このため、多くの業者は、現地に出向いた無料見積もりをおこなっています。遺品の量や作業環境等を確認の上、見積書を作成・提示してくれますので、まずは無料見積もりを依頼すると良いでしょう。

見積書を提示されたら、「作業一式〇〇円」といった内訳のない大雑把なものではなく、作業料金や廃棄処分料金などを合理的に算定した見積書となっているかどうか、チェックしてみると良いでしょう。また、スタッフの身だしなみや言葉遣いなども併せてチェックしましょう。これらは、その業者が誠実で信用できるかを見分ける材料となります。

また、最近は、不用品の中に金銭的な価値があれば買い取りをおこなう業者も増えてきました。場合によっては、買い取り代金との相殺により、結果的にコストを抑えることも可能です。

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一般社団法人シニアライフよろず相談室

一般社団法人シニアライフよろず相談室は、信頼できる提携の専門家・企業とのネットワークを活かし、相続・終活など、シニアのさまざまなお悩みをワンストップで解決できる相談窓口を運営しています。毎週金曜日、夕刊フジにコラム「シニアライフよろず相談室」を連載中。