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相続税申告の際の税理士の選び方

2022/12/8

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相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内におこなう必要があります。相続税申告書の作成は、不動産などの財産評価や添付書類の準備など、重い事務負担を伴います。限られた時間の中で相続人自身が対応するのはなかなか難しく、税理士に依頼するのが一般的です。

ここで重要なのが税理士の選び方。実は税理士なら誰でも相続税に詳しいということではありません。相続に詳しい税理士に依頼する場合と不慣れな税理士に依頼する場合とでは、相続税額に大きな差が出ることもあります。今回は、相続税申告の際の税理士の選び方について考えてみたいと思います。

相続に詳しい税理士は、ほんのひと握り

多くの税理士は、法人の記帳代行や決算申告、個人の確定申告などを主な業務領域としています。こうした業務をおこなうにあたって、相続に関する特段の知識やノウハウは必要ありません。また、税理士試験において「相続税法」は必須科目となっていないため、相続税法を勉強したことがない税理士も多いのです。「いつも確定申告をお願いしている税理士に相続税の申告をお願いしたが、対応が頼りなくて不安だった」というような話をよく聞きます。「相続に詳しい税理士は、ほんのひと握り」ということを、まず押さえておきましょう。

相続に詳しい税理士に依頼するメリット

相続税の減額が見込める

相続税に詳しい税理士は、相続税を減額できるポイントを十分に理解しています。不慣れな税理士との間で、一番大きな差が出るのが、土地の評価。土地の評価を下げられれば相続税評価額もそれに応じて下がりますが、土地の形状や地積、周辺環境など、土地の相続税評価額を引き下げることができるポイントを熟知した税理士と十分に理解していない税理士との間では、計算する相続税額に大きな差が出る場合があります。

不慣れな税理士に依頼した結果、相続税を余分に納めてしまったとしても、税務署は「納め過ぎ」について指摘してくれません。申告・納税後、こうした「納め過ぎ」に気づいた場合、相続税の申告期限から5年以内に「更正の請求」を行えば、納め過ぎた部分の還付を受けることができますが、相続人自身が「納め過ぎ」に気づくのは、困難でしょう。

税務調査の際に申告漏れを指摘されるリスクが低い

上記とは逆の話ですが、不慣れな税理士に相続税申告を依頼した場合、税務調査の際に申告漏れを指摘されるリスクが相対的に高いという傾向があります。「被相続人の預金口座のお金の流れについてのチェックが甘く、被相続人が亡くなる前3年以内におこなった相続人に対する生前贈与を相続財産に戻し入れることなく、相続税額を計算してしまっていた」というような話も聞きます。本来は相続開始前3年以内に、被相続人から贈与を受けた財産がある場合、その贈与財産は相続税の課税価格に加算しなければいけません。

相続に詳しい税理士の場合、こうした見落としをするリスクが低く、仮に税務調査が入ったとしても、立会いや税務署との折衝など、しっかり対応してくれるでしょう。

二次相続を見据えた有効なアドバイスが期待できる

最初の相続(一次相続)における被相続人(例えば父)の配偶者(母)が亡くなった際に発生する2回目の相続のことを「二次相続」といいます。一次相続の際の遺産分割を考えるにあたっては、「二次相続の相続税負担までトータルで考えた場合、どのような遺産分割をおこなうのが得策か?」という視点が必要となります。

配偶者の税額軽減の特例」は、配偶者が取得した相続財産が①「1億6,000万円」、②「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないというものです。例えば、父が亡くなり、相続人が母と子ども2人の場合、父の相続財産が1億6,000万円以下であれば、母が全額を取得すれば、一次相続時の相続税はかかりません。しかし、二次相続の際には、父の相続財産をあわせて大きくなった母の財産を子ども2人が一度に相続するため、相続税の税率が高くなります。一次相続時の相続税はかからなかったけれど、二次相続までトータルで考えると、相続税負担が結果的に大きくなってしまったということがあり得るのです。

相続税に詳しい税理士なら、一次相続の段階から、二次相続までトータルで考えた効果的なアドバイスが期待できます。

相続税に詳しい税理士の探し方

調べる際にまずは「相続税申告の取扱実績が一定件数以上あるか」「複数の税理士が在籍しているか」「初回1時間程度の無料相談に対応してくれるか」「報酬体系が明確か」といった点に着目すると良いでしょう。

また、信頼できる知人や取引銀行、不動産会社等に紹介してもらうという方法もあります。この場合、レスポンスの良さなどの定性面についても紹介元に確認してみると良いでしょう。

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一般社団法人シニアライフよろず相談室

一般社団法人シニアライフよろず相談室は、信頼できる提携の専門家・企業とのネットワークを活かし、相続・終活など、シニアのさまざまなお悩みをワンストップで解決できる相談窓口を運営しています。毎週金曜日、夕刊フジにコラム「シニアライフよろず相談室」を連載中。