相続税がかかる条件とは
2022/12/1
「遺産を相続したら相続税が高くて大変だった」というような話を聞いたことがあるかもしれません。はたして、自分の場合は相続税がかかるのか、かかるとしたらどれくらいの税額になるのか、心配になる人もいるかと思います。
ここでは、課税対象となる相続財産とはどんなものか、相続税の「基礎控除」の仕組みなど、相続税がかかるかどうかの判別をする上で重要な要素についてお伝えします。
もくじ
相続税の基本的な仕組み
相続税 は、被相続人が残したプラスの遺産からマイナスの遺産を差し引いた遺産の総額が基礎控除を超える場合に、その超えた部分に課税される税金です。
相続税がかかるかどうかを調べるためには、相続税の対象になる財産がどれくらいあるか、その遺産総額が基礎控除と比べて多いのかどうかで判別することができます。
では、相続税の対象となる財産にはどのようなものがあるのか、基礎控除はどのように算出するのか、順に見ていきます。
相続税の対象になる財産とならない財産
相続税の課税対象となる遺産は、土地や建物などの不動産、預貯金・現金・有価証券などの金融資産、宝石・貴金属、骨董品、家財などの動産です。そこにローンや借入金などマイナスの財産があれば、それを差し引いて課税対象となる遺産総額を算出します。
相続税がかかるかどうかを判別するには、まず相続税の課税対象となる財産があるか、またそれの価値や価格がいくらなのかを調べましょう。
例外として相続税がかからない遺産として認められているのは、墓地・仏壇・神具など先祖をまつる礼拝の対象となるものです。
また、「みなし相続財産」についても考慮しなければなりません。みなし相続財産とは、死亡時点では被相続人の財産ではなかったけれども、死亡を原因として相続人が取得する財産のことをいいます。代表的なものは死亡保険金や死亡退職金があります。
みなし相続財産は、受け取った相続人固有の財産となり、遺産分割の対象にはなりませんが、相続税の課税対象には含まれます。そのため、相続税の計算をするときには、生命保険金や死亡退職金も含めて考える必要があります。
ただし、死亡保険金や死亡退職金は遺族の生活維持に必要であることから、一定の金額は非課税とされています。このときの非課税枠の計算式は以下の通りです。
500万円×法定相続人の数=非課税枠
相続税の基礎控除とは?
次に基礎控除を算出してみましょう。先ほどの課税対象となる遺産総額から算出した基礎控除額を差し引いて、遺産総額が基礎控除額を下回れば相続税は発生しません。
相続税の基礎控除は、下記の式で計算されます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数 = 基礎控除額
仮に 法定相続人 が3人であれば、4,800万円(3,000万円+600万円×3人)が基礎控除となり、相続税の課税対象額は、遺産総額から基礎控除の4,800万円を差し引いた金額となります。
この場合、遺産が4,800万円以下であれば相続税はかからず、4,800万円以上であれば4,800万円を超えた分に相続税がかかるということになります。
基礎控除額の計算で注意すべきこと
基礎控除額の算出では法定相続人の数が大きく影響するため、 養子縁組 をしている場合には注意が必要です。法律上、養子縁組の人数に制限はありませんが、相続税を計算する際には、相続人に数えられる養子の数に制限が設けられています。実子がある場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなっています。
また、節税のために本来あるべき 相続放棄 の意思決定が翻弄されないよう、相続放棄があった場合には、相続放棄者も相続人の数に加えて、基礎控除は計算されます。
相続は法定相続人が相続の権利を有しますが、遺言書によって1人の相続人に、あるいは法定相続人以外に全財産を相続するような場合でも、基礎控除は、法定相続人の人数を反映した計算式となります。
基礎控除以外の控除
遺産総額が基礎控除を超えた場合に適用できる優遇を2点紹介します。
配偶者控除
配偶者控除とは、 配偶者 が負担することになった相続税を軽減する制度をいいます。故人の財産形成に対して配偶者の貢献があったことを考慮し、今後の生活を保障する目的で税額が軽減されます。
ただし、配偶者控除を適用すれば相続税が発生しないという場合でも、相続税の申告は必要になりますので、注意しましょう。
相続には「一次相続」と「二次相続」と呼ばれるものがあります。一次相続とは、両親のうち1人がなくなって、片方の親と子どもが相続人となる最初の相続のことを指します。二次相続はその次に起きる相続のことを指し、一次相続で相続人だった片方の親が亡くなり子どもが相続人となる相続です。
「一次相続は0円だったけど、二次相続では相続人も少なくなって多額の相続税が発生した」というケースも数多くあります。
配偶者控除はメリットの大きい制度ですが、次に起きる相続のことを考慮して分割を決定することをお勧めします。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が相続の開始直前まで住んでいた宅地などを、配偶者もしくは被相続人と同居の親族が相続する場合に宅地の評価額が減額されるという特例です。
ここでは被相続人の居住の用に供されていた宅地等の説明をいたします。事業の用に供される場合は要件が変わりますのでご注意ください
この特例は、被相続人が自宅として使用していた土地が対象になります。別荘などは対象になりません。330㎡まで80%の減額ができるので、相続税に大きな影響を与えます。(330㎡を超える部分については通常の金額になります)
特例が適用となる相続人の要件は、
- 配偶者
- 被相続人と同居していた親族
- 持ち家がない親族
となります。
例えば、評価額が3,000万円の土地を配偶者が相続した場合、評価額が8割減額され600万円となるため、相続税の計算するための遺産総額を大幅に減らすことができます。
前述の配偶者控除と小規模宅地等の特例は併用することも可能です。相続人が配偶者だけという場合は配偶者控除を適用するだけで相続税がかからないというケースが多いです。
また、相続人が複数の場合においても、取得する人が要件を満たし、小規模宅地等の特例の適用を受けることで相続財産全体の金額を抑えることができるので、他の相続人の相続税を減額できるということにもなります。
なお、被相続人に配偶者ならびに同居の親族がいない場合は、被相続人と別居していても、持ち家がなく3年以上借家に住んでいる親族にも、この特例が適用されます(通称:家なき子特例)。特例適用の要件には確認事項が多いため、専門家のアドバイスを事前に受けておくことをおすすめします。
まとめ
相続税がかかるのかどうかを判断するには、まず遺産総額がいくらあるのか、次に基礎控除を計算して、遺産総額が基礎控除内に収まっているかどうかを算出する必要があります。
そして遺産総額が基礎控除を超えていたら、基礎控除以外の「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」などを適用できないか調べてみましょう。
監修
SMC税理士法人/
SMC行政書士法人/
所沢遺産相続サポートセンター
SMCグループは、相続税申告を中核として、生前対策・遺言作成支援などの資産税コンサルティングを行っております。相続に関するお手続きをワンストップで対応することが可能です。