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相続した家が空き家になった場合のリスク

2022/9/29

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両親が亡くなり実家を相続することになったが、子どもたちはすでに持ち家があるため住む人が誰もおらず、空き家になってしまうケースが増えています。

「それなら売却しようか」という話が出ても、相続人の間で意見が合わなかったり、調べてみたら簡単に売却できない不動産であることが判明するなど、空き家としてそのままの状態にしてしまうこともあるでしょう。しかし、空き家として放置することでさまざまなリスクやデメリットが発生してしまいます。

この記事では、空き家を放置してしまうことで起こるリスクや、実家が空き家となってしまう場合にどのような対処方法があるのかなどを解説していきます。

空き家として放置することで起こること

現在、空き家は社会問題の一つになっています。空き家にもいろいろあり、売りに出しているが買い手が決まっていないもの、貸し出しているが入居者が決まっていないものも空き家に含まれますが、問題となっているのは、売りにも貸しにも出ておらず、定期的に利用されることがない空き家が増加していることです。

そのような空き家は所有者がきちんと管理できていないことが多く、地域の景観や安全を損なう可能性があり、問題視されています。

では、空き家状態のまま放置してしまうと、所有者にとってどのようなリスクがあるのでしょうか。

資産価値が下がる可能性がある

人の住んでいない建物は劣化の速度が急激に早まります。理由は、定期的に換気されないことで湿気がこもり建物内の木材等が劣化していくからです。建物の劣化によって雨漏りが発生し柱や梁が深刻なダメージを受けると、建物として利用することはできず、結果として「解体するしかない」ということにつながります。

空き家が近隣に迷惑をかけてしまう可能性がある

植木が伸び切ってしまって近隣住民に迷惑をかけてしまったり、修繕などを怠り建物が倒壊し通行人にケガを負わせたりするリスクが発生します。

また、管理されていない空き家は不審者に狙われやすく、人の目が届きにくいということで、放火のリスクが高まります。

空き家によってこのような問題が起こり、他人に迷惑をかけた場合は、損害賠償を求められるという最悪のケースも考えられます。

特定空家に指定される可能性がある

日本の空き家問題に対処すべく、2015年に政府は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)を施行しました。これにより、周辺の環境を悪化させると危惧される物件(特定空家)に指定された場合に所有者が改善を怠ると、50万円以下の過料が科されます。それでも改善が見られない場合、行政代執行によって建物が解体され、解体費用は所有者が負担することになります。

その他にも、特定空家に指定され、助言・指導をおこなっても、改善されない場合、勧告となり、住宅用地特例から除外され、結果として、固定資産税等が高くなります。

特定空家と判断される基準には以下の4つがあります。

・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である状態

実家を相続後、空き家となってしまう場合は、特定空家に指定されないように維持・管理していく必要があります。

相続後、空き家になってしまう場合に知っておきたいこと

空き家特例

維持・管理の手間やコストなどを相対的に考えて、空き家を売却したいと考える方も多いのではないでしょうか? その場合は「空き家特例」を適用できるとかなりの節税となります。

空き家特例とは、正式名称は「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、相続した空き家を売却する際に一定の要件を満たしていれば、譲渡所得に対して控除を受けられるというものです。空き家特例が適用された場合は、譲渡所得から3,000万円を控除することができ、所得税が大幅に軽減されます。

売却時にこの空き家特例が適用されるかは、以下のような要件をすべて満たす必要があります。

  • 被相続人が亡くなる直前まで1人で居住していた家であること(被相続人が老人ホームなどの入居していた場合は入居の直前まで)
  • 1981(昭和56)年5月31日以前に建築された建物であること
  • 一戸建てであること(マンションの区分所有は認められない)
  • 相続をしてから売却までの期間、空き家であったこと
  • 売却する空き家が耐震基準を満たしているか、建物を取り壊し更地で売却していること
  • 売却金額が1億円以下であること
  • 第三者への売却であること(配偶者や子ども、特別な関係がある場合は認められない)
  • 2023年12月31日まで、かつ相続発生の日から3年後の年末までの売却であること

空き家特例の適用要件は上記を含め他にも項目があるため、自身での判断が難しい場合は専門家に相談しましょう。

空き家管理サービス

一時的に空き家として適正に維持・管理したいという場合は、民間の空き家管理サービスの利用がおすすめです。

空き家管理サービスでは、主に換気や通水、簡易的な掃除、草むしりなどを定期的におこなってくれます。また、管理報告を受けることで、遠方の空き家の状態を把握することもできます。

家なき子特例

亡くなった方と同居する親族が家を相続した場合、「小規模宅地等の特例」という土地評価額を最大で80%減額できる特例を適用し、相続税を大幅に抑えることができます。
「小規模宅地等の特例」は原則として、同居親族が相続することが要件となっていますが、亡くなった方と同居していない場合でも、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができます。この特例が「家なき子特例」です。

家なき子特例が認められるための要件は以下の通りです。

  • 亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
  • 宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」「3親等以内の親族」「特別の関係がある法人」の持ち家に住んだことがない
  • 相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する
  • 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない

家なき子特例は相続時に適用される特例ですから、相続がすでに完了している場合は適用できませんが、これから相続を迎える人はぜひ検討してみてください。

まとめ

空き家問題は、親と離れて暮らす子どもが実家を相続するなど、相続に起因することが多いです。

実家を引き継いだ相続人としても売却したり、貸し出したりと、相続した実家をうまく活用できるのであればそれが一番ですが、やむを得ず空き家としておくしかない場合も出てくるでしょう。

そういった場合も、放置してしまうのではなく、維持・管理をきちんとするなど、少なくとも近隣に迷惑がかからないように配慮することが重要です。

(この記事は2022年10月時点の情報をもとに作成しています)

監修

監修

NPO法人 空家・空地管理センター 理事 

伊藤 雅一

NPO法人 空家・空地管理センターは、空き家に関わるあらゆるお困りごとをワンストップで解決する総合相談窓口です。社会問題化する「放置空き家」を無くすことを目標に各自治体と連携を図りながら日々活動をおこなっています。ご相談者様一人ひとりの立場に立って、ご提案やサポートをさせていただきますので、ぜひお悩み、ご要望をお聞かせください。